2011 年 21 巻 1 号 p. 39-51
社会シミュレーションはミクロ-マクロリンク,つまり個人の意思決定と社会構造の相互作用をとらえるのに適しており,この長所を活かしてさまざまな研究が進んでいる.しかし,社会を理解するうえで重要であるが,先行研究では取り上げられていない事象もあり,研究の宝庫である.本稿では社会シミュレーションの今後の発展のために,進化ゲーム理論をもとにした社会シミュレーションである進化シミュレーションを用いた筆者たちによる3種類の研究を紹介する.第一に,特定の意思決定のメカニズムを,人間は進化の過程でいかにして獲得したのかを分析した研究,第二に,人間特有の意思決定を所与のものとしたとき,それらの集積がどのような社会現象を生み出すのかを分析した研究,第三に,人々の意思決定と制度の維持との関係を分析した研究である.こうした視点から研究を分類・紹介することで,社会シミュレーションがさまざまなレベルの対象を扱えることを示す.