2011 年 21 巻 1 号 p. 60-68
本論文の目的は,複数のナッシュ均衡が存在する投票のゲーム理論モデルにおいて,どのナッシュ均衡が実現しやすいかを実験室実験によって特定することである.理論的にはどのナッシュ均衡が実現しやすいといえるかを「ブロック投票」という概念を用いた均衡選択により検討したうえで,その理論的帰結を実験室実験により検証する.実験では,セッションごとに,また投票の回ごとに,異なるナッシュ均衡に対応する結果がしばしば観察されたものの,どのセッシヨンの結果にも理論的帰結と一部整合的な特徴を見出すことができた.したがって,本論文が取り上げる投票のモデルでは,複数のナッシュ均衡のうち常にいずれか1つのナッシュ均衡が実現するわけではないが,平均的には,理論的帰結と一部整合的な特徴を持つ結果が実現しやすいとの結論を得た.