2011 年 21 巻 2 号 p. 105-114
風力発電は地球規模での公共利益が期待される一方で,立地地域へは景観破壊や騒音といった局所的な環境影響を引き起こす潜在性があり,近年では地域住民による反対運動がたびたび生じている.そこで本研究では,風力発電の長所と短所に関する情報を用いて,プレーヤが相対的に風力発電の導入について議論することをめざし,説得納得ゲームを用いた科学技術コミュニケーションツールの開発を行った.本研究の結果,以下の知見が得られた.第一に,本ゲーミングによってプレーヤは風力発電の長所への理解を向上させることができた.第二に,風力発電の短所の認識が少ない人ほど短所の理解が高まる傾向があった.第三に,風力発電の短所を認識している人はあまり多くないことが確認された.第四に,プレーヤは立場により風車への評価に違いがあることへの気づきを得ることができた.最後に,個人から集団への意思決定プロセスを体験するシミュレーションツールとして,説得納得ゲームの利用可能性を提示することができた.