2017 年 25 巻 1 号 p. 11-19
地域のあり方を損なわずに住民に納得のいく形で地域PRを行うためには,住民に対する共感を生む物語を消費者に提示することが必要である.そこで本研究では,地域特産品を題材とした物語を消費者に提示する実験を行うことで,住民に対する消費者の共感を促す物語提示方法を明らかにする.山形県最上町において,大冷害をきっかけにアスパラが導入されたプロセスを物語として提示する実験を行った.被検者を2つのグループに分け,物語内容伝達を重視した「文章提示」と,コミュニケーション重視の「素話」のいずれかの方法で物語を提示した.文章提示と素話のいずれでも,物語提示により消費者にとってのアスパラの妥当価格は増加するが,増加に至るまでのメカニズムが文章提示と素話とで異なることが確認された.また,現実の登場人物に会いたい気持ちの強さは,物語のコミュニケーション面に関心のある人に限って,素話で効果的に高められることが明らかになった.これは,被検者が物語の登場人物に共感したためであると解釈できる.