シミュレーション&ゲーミング
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査読論文
震災がれき受け入れ是非のリスクコミュニケーションゲームの作成
広瀬 幸雄
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2017 年 25 巻 1 号 p. 3-10

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抄録

本研究の目的は,震災がれきの処理受け入れの是非に関する住民と行政の共通理解を目指すリスクコミュニケーションゲームを作成し,リスクコミュニケーションの学部演習の教材として使用可能か否かを検討することである.東日本大震災により大量の震災がれきが発生したが,政府が復興を早めるために策定した被災地以外での広域処理の政策は,多くの住民の反対で実施が困難となった.受け入れ反対の理由は,がれきに含まれる放射能物質による健康リスクや風評被害への懸念など多様であった.そこで,ゲームの目的として,住民と行政職員の役割を交互に演じることで,震災がれきの受け入れの是非についての住民の多様な態度やその根拠になる社会的背景を理解し,それぞれの態度や背景に応じたリスクコミュニケーションが必要だと理解することとした.参加者の大学生にはゲーム作成についてのレポートを作成させた.レポートの中でのゲーム作成と実施についての学生自身の感想に関する記述を整理したところ,リスクコミュニケーションでの知識や共通理解が重要であること,役割交替による他者理解が深まること,問題自体への理解が深まることの3つをゲーム体験の効果としてあげていた.それを受けて,ゲーム後のディブリーフィングでは,役割を交替したことによって震災がれきの受け入れへの複眼的な見方ができるように促すことが重要であることについて検討した.

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© 2017 日本シミュレーション&ゲーミング学会
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