シミュレーション&ゲーミング
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査読論文
無知のヴェールは合意形成を促進するか:指定廃棄物処分立地ゲームを用いた検討
横山 実紀大沼 進広瀬 幸雄
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2017 年 26 巻 1 号 p. 21-32

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抄録

本研究は指定廃棄物の長期管理施設の問題を模した指定廃棄物処分立地ゲーム(広瀬 2015)を基に,無知のヴェールがNIMBY問題の合意形成を促進する可能性を検討した.当該ゲームでは,利害を知る当事者(“市長”)が議論する段階と自分の利害関係について無知だが潜在的に当事者となり得る状況(無知のヴェール)下にあるプレーヤー(“市民”)が議論する段階があり,最終決定は後者に委ねられる.この状況で最終決定者は公正な決定を行えるか,決定に関与できない利害当事者が受容できるかを検討した.研究1では不公正な決定が8グループ中3つでみられ,利害当事者の受容も高まらなかった.研究2では,全員が利害当事者となって議論し,それでは合意に至らないという経験を経てから同様の段階的意思決定を行ったところ,不公正な決定はみられず,利害当事者の受容の割合が増えた.以上より,単に無知のヴェールによる決定だけでは不十分で,利害当事者だけによる議論では合意形成が困難であるという経験の必要性が示唆された.

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© 2017 日本シミュレーション&ゲーミング学会
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