持続可能なエネルギーシステムの構築には,供給安定性,経済性,環境性,安全性といった社会的要請を念頭に置きつつ,利害関係者の価値の対立を乗り越えて合意を形成してゆく必要がある.そうした分野融合的なテーマを大学工学部で教える方法論については模索が続いている段階である.本稿は筆者が実施してきたエネルギーシステム初学者向けのゲーミングを題材とし,その設計過程と教育効果を報告する.本稿ではゲームデザインを学習に必要な経験を生み出すための仕組みづくりとして捉え,ゲームのルールが経験を生み出す仕組みを図式化したうえで,ルールのデザイン過程を報告した.ゲーミング実施後のレポート課題を分析すると,技術選択を通じて社会からの要請に応える視点や価値の対立を乗り越えて合意形成する能力・態度を学ぶという目標はおおむね達成されており,エネルギーシステム教育におけるゲーミングの有用性が示唆された.