シミュレーション&ゲーミング
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査読論文
エボラ出血熱に対するエージェントベース医療政策ゲーミング&シミュレーション
倉橋 節也
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2017 年 26 巻 2 号 p. 52-63

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抄録

本論文では,天然痘ウイルスおよびエボラ出血熱ウイルスをベースとした新型感染症の感染シミュレーションと,それに対する医療政策ゲームの有効性について述べる.インフルエンザや天然痘バイオテロに対する感染モデルとしては,SIRモデルが広く用いられてきたが,近年エージェントベースモデルあるいはIndividual based modelが普及し始めている.このモデルでは,一人ひとりの行動をコンピュータ上で表現することが可能であり,これらのデータを用いて人々の接触過程をシミュレーションすることから,感染症の広がりを表現することができる.本研究では,Epstein等の天然痘感染モデルをベースとして,医療政策として重要なワクチン備蓄量・抗ウイルス薬備蓄量・感染症対策を行う医療スタッフ数などをモデル化した.またエボラ出血熱ウイルスの感染モデルの実装を行い,有効なワクチンが開発されていない感染症での感染シミュレーションをモデル化した.これらの実験から,事前のワクチン備蓄量と医療スタッフの人員が,感染症の広がりを抑制するためにクリティカルな要因となっていることが見出された.また,これらのシミュレーションモデルをベースに,シリアスゲームとして感染対策を行う医療政策決定ゲームを作成し,その効果を検証した.ゲームの結果,ワクチン備蓄量などの決定に加えて,感染の発生が広がっている相手国への医療支援の意思決定タイミングおよび外出自粛や出入国制限が重要であることが見出された.

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© 2017 日本シミュレーション&ゲーミング学会
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