2018 年 27 巻 2 号 p. 101-110
本稿では,アクティブラーニング型授業手法の1つとして,『シミュレーション教材「ひょうたん島問題」多文化共生社会ニッポンの学習課題』(藤原 2008)に基づく授業実践を取り上げ,シミュレーション参加者が役を担うという点に着目して,グループディスカッションへの参加とのかかわりを考察する.学生を中心にした学びが注目される中,アクティブラーニング型の授業が増えても,当の学生が受け身のままでは,主体的な学習にはつながらない.しかし,少人数のグループで参加者が固有の役を担当するシミュレーションの実践では,役に対する責任感,役に対する共感やまとめ役の存在が学生の発言を後押ししていた.また,参加学生の多くは,シミュレーションを用いた授業は学習意欲を向上させると認識していた.シミュレーションは,学びに受け身な学生の授業参加を促し,アクティブラーナーへと導くツールであり,日本の大学教育においてアクティブラーニングへの転換が求められている今こそ,より重要な役割を担っている.