情報モラルの代表的な指導法として,玉田・松田・遠藤(2004)の「3種の知識」による指導法がある.当該指導法では,道徳的規範知識の低い学習者に対して,自分の行為を被害者の立場から検討させる方法が有効だと述べられている.筆者らのグループでは,当該指導法の効果をより高めるために,バーチャルリアリティ(VR)の活用を検討してきた.そして,教育工学分野で活用されてきたVTRの鏡的利用法を応用した,VRの鏡的利用法を提案した.本研究では,当該手法に基づく教材を開発し,その効果を検証した.具体的には,学習者がVR内で行った行為を,被害者の立場から振り返らせるために,VR内で加害者となるアバターの顔に実験参加者の顔写真を添付し,被害者体験させた.その結果,VRの鏡的利用法ありの群がなしの群に比べ,情報モラルに対する意識が高く,情報モラルに反する行為の減少が見られた.