シミュレーション&ゲーミング
Online ISSN : 2434-0472
Print ISSN : 1345-1499
27 巻, 2 号
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特集論文:教育の変革を促すシミュレーション&ゲーミング
査読論文
  • 松田 稔樹
    2018 年 27 巻 2 号 p. 49-60
    発行日: 2018/05/20
    公開日: 2019/08/06
    ジャーナル フリー

    本稿では,Matsuda(2012)のゲーミング教材の提案を発展させ,認知主義的な指導を実現するゲーミング教材設計法を考察する.最初に,学習者が習得すべき思考過程をモデル化した「問題解決の縦糸・横糸モデル」を示す.また,認知主義的な指導と行動主義的な指導との違いを明確にするために,アドホック型CAIと知的CAIとの設計の違いを考察し,そこからの類推で,モデルを適切に活かす方法を提案する.さらに,以上の考え方でゲーミング教材を開発し,教育実践研究を行うことを支援するために,大学院の授業科目で行っているゲーミング教材開発の指導方法を述べる.その際,限られた時間の中でより適切な教材の開発を支援するために,教材開発手法を提案し,さらには,その開発手法に即した作業を支援しつつ,開発者の教育実践研究能力を高めるためにe-portfolioシステムを開発し,活用することを提案する.

  • 岡田 佳子
    2018 年 27 巻 2 号 p. 61-73
    発行日: 2018/05/20
    公開日: 2019/08/06
    ジャーナル フリー

    本研究では大学生を対象としたソーシャルスキル教育のためのシミュレーション教材の試作版を作成した.教材は講義と連動して講義の復習や,講義中の演習等で使用することを想定した.ソーシャルスキル教育の般化と効果の維持の問題を克服するために対人葛藤場面を問題解決場面とみなし,松田(2016a)の問題解決の縦糸・横糸モデルに即してソーシャルスキル教育で育成したい資質・能力をモデル化したうえで教材を作成した.教材の効果検討と改善のための情報を得るために,試作した教材を理工系の大学生22名に実施した.学生が教材使用前に発想した案と教材使用時に発想した案を比較したところ,教材使用前に比べて教材使用時のほうが対人交渉方略のレベルが高い案となっていた.ただし,これは講義と教材利用を組み合わせた効果であり,教材の独自の効果を検討することができていないことや,対象が理工系大学生に限定されることなどが本研究の限界点としてあげられ,今後の課題が示された.また,学生の自由記述やアンケートの結果および活動の記録より,教材のインターフェイス改善とフィードバックおよび協働学習機能の追加が今後の改良点として示された.

  • 竹村 徳倫, 松田 稔樹
    2018 年 27 巻 2 号 p. 75-86
    発行日: 2018/05/20
    公開日: 2019/08/06
    ジャーナル フリー

    本研究では,留学生の文章作成のためのスキーマの形成を目的とし,日本語作文教育用問題解決の縦糸・横糸モデルとゲーミング教材の開発を行った.また,日本国内の大学の情報文化学科で学ぶ留学生12名を対象に教材を使用して,文章の良さとその具体化の手法の関連性の明示的指導によるスキーマの形成支援の効果の検証を行った.文章の良さと具体化の手法に関する認知レベルについては,ルーブリックによる評価基準を作成して評価を行った.一方,文章作成スキーマ形成の効果の検証は,教材の使用前後に作成した2種の課題の文章と,それを実現するために行った工夫に関する質問紙調査のコメントデータと,教材のログを用いて分析した.その結果,文章の良さと具体化の手法の認知レベルと,スキーマ形成の成功との関連性に関する示唆を得ることができた.

  • 杉浦 淳吉, 三神 彩子
    2018 年 27 巻 2 号 p. 87-99
    発行日: 2018/05/20
    公開日: 2019/08/06
    ジャーナル フリー

    本研究ではカードゲームのデザインと実践・評価を行い,そのプロセスから学習システムとしての転用可能性を検討した.カードゲームはゲームのルールとカードのコンテンツから成り立っており,それぞれを考える学習システムについて検討した.社会的課題として省エネルギー行動の普及を事例として取り上げ,カードゲームのコンテンツを考案した.カードゲームのルールとして七並べを応用し,カードを並べながらコンテンツの内容と構造を理解していくプロセスを「省エネ行動トランプ」のデザインと実践から考察した.省エネ行動トランプの評価について親子を対象としたワークショップから検討した.またゲーム実施と現実の省エネ行動との関連について大学教育での実践で検討した.さらに七並べのバリエーションを検討し,ワークショップとしてのプログラムを示した.省エネ行動のゲームのルールと学習すべき内容をデザインすること,逆にデザインされたゲームからコンテンツとルールを検討するという両方向を考察することから,この事例の学習システムとしての転用可能性を展望した.

  • 杉野 知恵
    2018 年 27 巻 2 号 p. 101-110
    発行日: 2018/05/20
    公開日: 2019/08/06
    ジャーナル フリー

    本稿では,アクティブラーニング型授業手法の1つとして,『シミュレーション教材「ひょうたん島問題」多文化共生社会ニッポンの学習課題』(藤原 2008)に基づく授業実践を取り上げ,シミュレーション参加者が役を担うという点に着目して,グループディスカッションへの参加とのかかわりを考察する.学生を中心にした学びが注目される中,アクティブラーニング型の授業が増えても,当の学生が受け身のままでは,主体的な学習にはつながらない.しかし,少人数のグループで参加者が固有の役を担当するシミュレーションの実践では,役に対する責任感,役に対する共感やまとめ役の存在が学生の発言を後押ししていた.また,参加学生の多くは,シミュレーションを用いた授業は学習意欲を向上させると認識していた.シミュレーションは,学びに受け身な学生の授業参加を促し,アクティブラーナーへと導くツールであり,日本の大学教育においてアクティブラーニングへの転換が求められている今こそ,より重要な役割を担っている.

  • 瀧島 大地, 中山 洋, 松田 稔樹
    2018 年 27 巻 2 号 p. 111-119
    発行日: 2018/05/20
    公開日: 2019/08/06
    ジャーナル フリー

    情報モラルの代表的な指導法として,玉田・松田・遠藤(2004)の「3種の知識」による指導法がある.当該指導法では,道徳的規範知識の低い学習者に対して,自分の行為を被害者の立場から検討させる方法が有効だと述べられている.筆者らのグループでは,当該指導法の効果をより高めるために,バーチャルリアリティ(VR)の活用を検討してきた.そして,教育工学分野で活用されてきたVTRの鏡的利用法を応用した,VRの鏡的利用法を提案した.本研究では,当該手法に基づく教材を開発し,その効果を検証した.具体的には,学習者がVR内で行った行為を,被害者の立場から振り返らせるために,VR内で加害者となるアバターの顔に実験参加者の顔写真を添付し,被害者体験させた.その結果,VRの鏡的利用法ありの群がなしの群に比べ,情報モラルに対する意識が高く,情報モラルに反する行為の減少が見られた.

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