本研究では,複数世代での風土保全を体験するゲーミングを開発・実施し,風土保全のための世代間倫理の創発の可能性を探求する.今回開発した「風土継承ゲーミング」では,各プレイヤーには村長という役割が与えられ,複数世代で村づくりに取り組む.これは一種のノベルゲームであり,各シナリオに対する村長の選択により村の社会経済状況と風景の状況が変化し,次の代のプレイヤーに引き継がれる.実験の結果,後の代になるほど風景に対する自身の関心に反し村全体のバランスを志向した選択をする傾向があること,そうした判断は先行世代の行動履歴を意識することによる可能性があること,そしてプレイヤーによっては直前世代の村長の意向に反する選択をする傾向があることが確認された.こうした結果は,プレイヤーが,個人の関心ではなく村全体にとって必要な選択を求める規範を意識して行動したことを示していると考えられる.