2024 年 34 巻 2 号 p. 87-98
除去土壌の福島県外最終処分を巡る合意形成に向けて,公衆–ステークホルダー参加・関与のプロセスが要請されている.本研究の目的は,その多段階の対話の過程を模したゲーミングを作ること,および一般市民が公共的視点と当事者の視点の両方を踏まえ,当事者の負担軽減に繋がる提案を行えるゲームとそうでないゲームの違いを明らかにすることである.そこで3段階からなる除去土壌ゲームを作成した.段階1・2はステークホルダーによる議論で利害対立のある状況を設定し,その後に行われる段階3では,一般市民による議論で利害対立のない状況を設定した.またゲーミングとともに質問紙調査を実施した.12ゲームを実施した結果,段階1・2で合意形成に失敗したゲームほど,段階3で負担軽減に繋がる提案を行える傾向が見られた.そのようなゲームでは,段階1・2で利害当事者の役割へのコミットメントが高く,段階3でその立場への視点取得が行われやすく,彼らの利害,価値や感情を踏まえた提案を行えていた.以上の結果をふまえ,公共的観点と視点取得を両立させた問題解決のあり方を考察した.