2022 年 43 巻 2 号 p. 148-158
本研究は、留学生の援助要請についてレビューを行った。留学生は一般学生より多くのストレスを抱え、抑うつや不安などのメンタルヘルス問題に陥りやすいため、問題が深刻化する前に積極的な援助要請が大切とされているが、留学生の学生相談機関の過少利用が問題となっている。そこで本研究は、これまでの日本国内外の研究論文25 編に基づき、留学生の援助要請に関連する論文の動向と得られた知見を整理し、留学生の援助要請をより的確に捉え、実践に活かすために今後の課題と研究の方向性を示した。留学生の援助要請研究において、地域や国単位で扱われる傾向、アジア留学生を一括にされる傾向とその限界が指摘され、留学生の援助要請を捉えるためのパラダイムの転換が期待される。また、留学生の援助要請は彼らの生まれ育った文化とホスト文化の両方の影響を受けており、その影響が流動であることが指摘され、これらの点に配慮した理解のモデルの提案が期待される。さらに、日本の留学生相談の支援現場に役立つためには、日本の留学生の特徴を踏まえた日本独自の留学生の援助要請の知見の蓄積が求められる。