抄録
本発表は、肥満が人口全体の健康問題とされ、減量への志向が強まるアメリカ(カリフォルニア州)でのフィールドワークをもとに、減量とそれに関連する行為の背景にある複雑で多様な問題群を明らかにする。そのうえで、「科学」が示す極めて単純なはずの減量が、当事者にとっては、自己の身体と食物の関係にかかわる不確実な事象として立ち現れてくる様態を描き出すことを目的とする。特に、当事者たちが太った原因と結果をいかに結びつけ、そのことが不確実性としていかにして経験されるのかを整理する。減量をめぐる不確実性に着目することによって、目的合理的であろうとする行為が、結果的に不可避に不確実性をはらむという問題をあぶり出す。