抄録
本発表では、青海省に居住するモンゴル族遊牧社会を対象に、中国牧畜地域の全体を取り巻く生態保護政策の影響とそれに対する牧民の対応について考察する。調査地の海西モンゴル族チベット族自治州では2009年から遊牧民を定住化させるプロジェクトが本格的に実施された。遊牧民の定住地の建設は中国新農村新牧区の建設と相まって、伝統的な遊牧社会を根本から変えようとしている。 このような変動のなか、牧民がどのような対応を取っているのか。伝統的な生活を維持するために努力している牧民と、農耕と商業へ移行する牧民について、それぞれ具体的な事例を挙げて詳しく検討する。