抄録
本分科会は、ケアの営みへの注目から東南アジアの社会基盤を探るとともに、そこから広く人間にとってのケアの価値と意味を問うという全体的な目的のもと、そのための一つの試みとして、東南アジアにおいて進行する社会変化のなかで近年現れている高齢者の「新たな暮らし」に焦点を当て、それをめぐり生じているケアの価値と規範の変化について考察する。具体的には、北タイ山地のカレン社会における高齢者ケアの実践と意味の20年間の変化、ベトナム中部の農村部における高齢者の独居も含む居住選択、インドネシアの都市部における福祉施設に入所する高齢者、ラオス南部の低地農村部における老親によるマゴ育という4つの地域の事例を取り上げながら、日常的なケアの現場において人びとが抱く矛盾や葛藤、戸惑いが織りこまれた現在進行形の変化について考察する。