抄録
本発表は、クリフォード・ギアツの論考「同時代のバリにおける「内在的改宗」」に示される宗教合理化論を、ヴェーバーの宗教合理化論の論理と対比させつつ、批判的に再検討しようとするものである。この議論は、発表者が意図する、バリあるいは広く楽園観光地の宗教と観光の合理化に関する研究の一環をなす。 当該のギアツのバリ宗教合理化論は、(a)ヴェーバー合理化論の要約、(b)「伝統的なバリ宗教」の実態の要約、(c)戦後のバリ宗教の変容の素描、という3つの部分から構成される。発表者は、すでに(c)の批判的検討を行ったことがあり、本発表では(a)の検討が焦点となる。ギアツの議論の検討を通してヴェーバー合理化論の可能性を再確認し、ヴェーバー合理化論の論理をさらに推し進める理解の展望について、バリ宗教に関する民族誌的事実にも若干触れつつ、考察を加える。