抄録
発表者は、ブラジル中西部マト・グロッソ州において、国立植民農地改革院(INCRA)によって農地改革を目的に建設された入植地に関して、通算17ヶ月間の調査を実施してきた。農地改革の受益者とは、主に経済的機会を求めて、生活基盤のある複数の地点を比較的短期間のうちに遊動しながら生活している農村移民労働者たちである。彼らは入植地の開発や統治の促進を国家に対して求める一方で、その多くが入植地には定住せず、やがて土地を手放し、他所へと移っていく。今日、多くの政策研究においては「よき統治」を前提にした議論がなされているが、本発表は、そもそも「統治されない」ということが、マト・グロッソの農村で遊動生活を送る人々にとっていかなる重要性を持っているのかという問題を議論の俎上に載せる試みである。