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挫折せずに経験を活かし続けていくために、ネットワーキングの提案
椎野 若菜
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A01-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/22
会議録・要旨集
フリー
本分科会の目的は、女性調査者の多くが自らのキャリア形成と同時に直面する結婚、妊娠、出産、介護、また未婚、離婚、死別といったライフイベントによる調査者自身の属性の変化と、それに伴う調査地との関係やポジショナリティの変化、そして調査を続けるための困難や工夫について焦点をあて、そうした経験をも民族誌的データとしていく試みの提案と、またそうした困難や情報を共有するネットワーキングの提案を行うことである。
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等身大でのフィールドとの対話へ
椎野 若菜
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A02-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/22
会議録・要旨集
フリー
女性は様々なファクターでフィールドワークの継続について悩まざるを得ない状況があり、現状は雇用、キャリアのためには博論執筆は必須、とシビアなプレッシャーが女性に一時期に集中する。このような困難に直面した状況をフィールドワークすることで、その一見ネガティブなファクターを民族誌として分析展開、描出できるのが人類学であることを示すためにも、情報共有のネットワークを形成し一歩をふむべきではないだろうか。
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フィールドワーカーの立ち位置はどう変わるのか
杉田 映理
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A03-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/22
会議録・要旨集
フリー
報告者は、博士課程の学生かつ未婚であった時にウガンダの農村部において1年強の長期フィールドワークをおこなった。そして14年ほどの時を経て、今度は子ども2人を連れて家族とともに同じ農村において住み込みの調査を実施した。本発表では、子連れでフィールドワークを行ったときの調査地での自分の立ち位置が14年前とどう変化したのか、またそれがなぜなのか、さらにフィールドで得られるデータに変化はあったのかを考察したい。
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フィールドワークと「子どもをもつ」ことを両立させる難しさ
大門 碧
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A04-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/22
会議録・要旨集
フリー
発表者自身が、自分の子どもを連れてフィールドワークに向かった際に生じた困難を、フィールドワークという活動が強いる受動性から分析する。「子どもをもつ」ことは、もうひとつの受動性を引き受けることへとつながり、(女性の)フィールドワーカーは二重の受動性を生きることに困難を感じる。しかしこの困難さを脱する手がかりを見つけるのもまたフィールドにおいてなのである。
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子連れ調査の経験から考える
菅野 美佐子
p.
A05-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/22
会議録・要旨集
フリー
本報告では、女性調査者が現地社会と自らの帰属する社会の双方のジェンダー規範やジェンダー構造に絡め取られながら実践するフィールドワークを「ジェンダー的価値の交差点」ととらえ、そのなかで調査者はいかなるポジショナリティの変化を経験したり、困難的状況に直面し、それにどう向き合い、あるいは今後どう向き合っていけばよいのかを、子連れフィールドワークの経験から考察することを目指す。
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フィールドワークでの異邦者から参与者、そして当事者へのプロセスを通じて
國弘 暁子
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A06-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/22
会議録・要旨集
フリー
本発表は、報告者がフィールドに初め異邦者として姿を現し、そこで自らのセクシュアルな身体を剥き出しにされながらフィールドでの人々の生の営みに取り込まれた過程を、さらに、子供を産むという報告者自身のセクシュアルな経験がフィールドで新たな義務役割関係を生じさせた事実を振り返り、ヒジュラ共同体での異邦者の受けとめ方や、その異邦者に対してなされる、回帰することのないギフトの意味について考察する。
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公共人類学の挑戦と課題
関谷 雄一
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A07-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/22
会議録・要旨集
フリー
本分科会では、協働で福島県を中心とした創造的復興開発について考察してきた私たち5名(山下晋司、箭内匡、高倉浩樹、武田直樹、関谷雄一)により、右記の課題に対する文化人類学による挑戦と課題を示し、議論を促す。本研究では、この「復興」という問題に公共人類学的視点からどんなアプローチが可能なのか、私たちが取り組んできたいくつかの具体的な実践活動を紹介しつつ、独自の理論・方法を構築することを検討してみたい。
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避難者の状況に即した定義
関谷 雄一
p.
A08-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/22
会議録・要旨集
フリー
フクシマは終わっていない。本報告では表題の「創造的復興開発」という概念につき、これからのフクシマに向き合う時のアカデミズム、とりわけ本分科会が掲げる公共人類学の姿勢に係る学問的根拠を福島県避難者の状況に即した形でその意味を提示してみたい。報告者がこれまで行ってきた福島県の県外避難者に対するインタビュー、ウクライナ・チェルノブイリ原発事故被災者たちへのインタビューから寄せられた声に基づく分析を行う。
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-セーフティネットの可視化の試みから-
武田 直樹
p.
A09-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/22
会議録・要旨集
フリー
本発表では、筆者が直接関わる立場で、福島県からつくば市への避難者を支援してきた多様な団体の支援活動について、「つくば市での避難者支援この5年」というテーマで撮影・編集を行ってきた映像アーカイブを使用する。アーカイブ制作を通して考察してきたこと、とりわけ、通常見え難い「セーフティネットの可視化」という視点をとりあげ実践者として可視化の試みにより、ネットワークづくりがどう改善されうるのかを論じる。
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原発被災とイメージの問題
箭内 匡
p.
A10-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/22
会議録・要旨集
フリー
原発被災とイメージの問題に関して、本発表では二つの作業を行う。第一の作業は、関連する様々なドキュメント(文字あるいは写真や動画映像によるもの)を検討しつつ、〈可視的なもの〉と〈不可視のもの〉の関係を、イメージ概念を軸にして考察することである。第二の作業は、本分科会の発表者の一人である武田直樹がつくば市で行ってきた、福島避難者支援のネットワークに関する映像記録資料について考察することである。
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公共ツーリズムの実践
山下 晋司
p.
A11-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/22
会議録・要旨集
フリー
本発表では観光(ツーリズム)の視点からフクシマという課題を検討する。ここではとくに筆者が関係しているNPO法人「人間の安全保障」フォーラム(HSF)の「まなび旅」というプロジェクトから考えてみたい。フクシマは終わっていない。というよりこれからである。被災地と他の世界をつなぎ、観光(ツーリズム)を通して開かれた課題を考え、解いていく試みとしてのまなび旅を公共ツーリズムの実践として位置づけ、議論する。
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マリリン・ストラザーン著『部分的つながり』を介して
大杉 高司
p.
A12-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/22
会議録・要旨集
フリー
マリリン・ストラザーン『部分的つながり』の独創性は、メラネシアの社会性を経由して、観察し分析する私たちの自身の理論や枠組みを徹底して再構成し、そのことによって彼我を同一水準上で比較してみせた点にある。本分科会では、この「対称性」が、今日どのように再生=更新されうるのか、それがどんな新たな知と存在のありようを予期させるのかを、複数の角度から問う。
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ガーナ南部における「社会的なもの」の「部分的つながり」
浜田 明範
p.
A13-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/22
会議録・要旨集
フリー
マリリン・ストラザーンは『部分的つながり』のなかで、像、カヌー、杭、うなり木、音を立てる樹木、人間、太鼓、仮面、家、杭を部分的につなげられたセリーとして提示している。本発表では、この部分的につなげられたセリーという発想に依拠しながらガーナ南部における複数の社会的なものの関係を分析することで、現代思想における社会的なものに関する議論の前提となっている人間観を問い直すことを目的とする。
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インドの運動に準拠しながら
田口 陽子
p.
A14-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/22
会議録・要旨集
フリー
本稿は、現代インドの市民運動を、知的営みと実践における「部分的つながり」を介して論じる。サバルタン研究は、西洋的な「市民社会」概念の批判的練り上げから、「政治社会」概念を生み出してきた。これを背景に、今日の市民運動は、政治社会との関係において、自らの「非政治性」を主張している。本稿は、市民社会と政治社会のいずれにも回収されないつながりに着目することで、この運動の政治性を捉えなおすことを試みる。
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内山田 康
p.
A15-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/22
会議録・要旨集
フリー
全てを階層的な関係の中に包摂する全体論的な構造から逃れる先住民の女神がいる。この南インドの女神は、ある女性の非業の死から単独の神として生まれた。女神はヒンドゥー寺院の象徴的階層構造に取り込まれて穢れた部分を排除される。だが全体からは予測できない飛躍の中で排除された部分から意味が生み出される。系列と系列を横切って創発が起こり、全体論的な構造が部分化する過程を記述した後、部分と全体の関係を再考する。
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ストラザーンから現代哲学へ
清水 高志
p.
A16-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/22
会議録・要旨集
フリー
ストラザーンの『部分的つながり』が切り拓く思想的な展望を、二十一世紀の哲学の諸動向と同種の問題意識を孕んだものとして捉え直す。彼女が集団の全体という「一」と、その部分としての「多」を自明なものとして想定せず、媒体的なモノ=道具が集団形成に果たしている能動的な機能と、その変容を重視していることの意味を哲学的に考察する。
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『部分的つながり』によせて
大杉 高司
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A17-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/22
会議録・要旨集
フリー
『部分的つながり』のは今日の人類学の動向を予期していたものと読まれる傾向がある。本発表ではむしろ、本書が「遅れて」受容されたことに着目し、さらにその内容も執筆当時ストラザーンが置かれていた「現在」、受け継いできた「過去」を再生したものであることを明らかにする。またそのうえで、そのことが、「未来」に向けて知を再配置する私たち自身に伝える教訓を論じる。
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つながりの解体・再編・生成をめぐって
李 仁子, 金谷 美和, 二階堂 裕子, 佐藤 悦子
p.
A18-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/22
会議録・要旨集
フリー
本分科会の発表者は、東日本大震災の津波被災地で4年にわたって共同で調査研究を行ってきたメンバーで構成されている。津波によって一時的に異郷と化した被災地とその変容を民族誌的に記述するという目標の一環として、今回は被災地における人と人との「つながり」をテーマに据え、各自が分担した地域や対象から事例を引きながら、被災地ゆえに生じる多様な「つながり」の解体・再編・生成の諸相を明らかにする。
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宮古市T地区を事例に
佐藤 悦子
p.
A19-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/22
会議録・要旨集
フリー
本発表では、宮古市T地区を対象に、東日本大震災被災地における漁業再建の様相とそれに取り組む漁業従事者について報告する。国や自治体、漁業協同組合から示された「共同化」という枠組みの中で、漁業従事者はどのような「つながり」を基盤として被災地の基幹産業である漁業の再建に取り組んできたのかを明らかにすることで、復興プロセスにおける被災地の人々の「つながり」の一側面を浮き彫りにしたい。
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宮城県名取市の仮設住宅で暮らす被災者の社会関係の変容
二階堂 裕子
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A20-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/22
会議録・要旨集
フリー
本報告では、東日本大震災の発生後、宮城県名取市内の仮設住宅で暮らしている被災者の生活と社会関係について取り上げ、震災が被災地の社会構造に与えた影響を明らかにする。また、仮設住宅を訪問するボランティアの生活支援活動にも注目し、「異質な他者」としての存在が果たす役割について検討する。これらをふまえた上で、災害により壊滅状態となったコミュニティの再生に向けた道筋とその可能性について考察する。
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東日本大震災被災地の調査から
金谷 美和
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A21-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/23
会議録・要旨集
フリー
本発表は、2011年に発生した東日本大震災被災地において、仮設住宅などで実施されている手仕事グループの活動と、それに対する支援について報告する。手仕事グループ活動や制作される手工芸品は、災害のビジュアル・イメージをつくり、被災者が外の人々とつながっていくための契機をつくったと同時に、それまで地域社会に馴染みのなかったような外部的な価値基準や方法がいやおうなく持ち込まれていく契機として捉えられる。
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被災地の民族誌に向けての一断章
李 仁子
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A22-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/23
会議録・要旨集
フリー
東日本大震災の被災地では生活再建に向けた取り組みが進められ、被災者は今後を見据えてさまざまな選択を重ねてきている。その中でも本発表では特に、永住する場の選定、流された墓の再整備、犠牲者の追悼や慰霊といった点に注目し、局面が進むうちに従来からの人々の「つながり」が解消されたり、再編されたり、あるいは新たに生成されたりする過程を具体的な調査事例の中で報告し、被災地の民族誌に向けた一断章としたい。
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梶丸 岳
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B01-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/23
会議録・要旨集
フリー
現代の言語人類学は周辺諸分野の概念や知見を取り入れつつ、文化や社会、制度や象徴体系といったマクロなコンテクストと、ミクロな出来事とのあいだにある創発的な相互関係に関心を向けている。本分科会では言語イデオロギーやコンテクスト、記号をキーワードとしつつ、さまざまな事例を通じて「人が言語によってなにを実践しているのか」を明らかにし、「やりとりの人類学」としての言語人類学の姿を示すことを目指す。
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近代フィジーのテクスト化、あるいは歴史の所在
浅井 優一
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B02-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/23
会議録・要旨集
フリー
本発表では、言語人類学における相互行為理解に依拠し、フィジーにおける植民地期の文書を、その記述形式や形態に降り立って分析する。それにより、フィジー社会において首長制などとして理解されるに至った階層性を有した社会集団の範疇が、文書の記述を介して、どのように生み出されたのかについて審らかにするとともに、これまでは古文書の言及指示内容に焦点が当てられてきた歴史研究を、相互行為的に捉え直すことを試みる。
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歌のコンテクスト化と記号論的記述
梶丸 岳
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B03-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/23
会議録・要旨集
フリー
本発表では追善供養儀礼で歌われるラオスの掛け合い歌「カップ・サムヌア」の構造について明らかにしつつ、やりとりにおいてなにがコンテクストとして指標されているのかを考察する。そこから、カップ・サムヌアが儀礼の場を発語媒介的力によって言祝ぎ、理念的な象徴世界を生みだしていることを明らかにする。最後に、こうした出来事を記述する枠組みとしてパース的な記号論の枠組みを用いる有効性について論じる。
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引き金と握手
野澤 俊介
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B04-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/23
会議録・要旨集
フリー
マリノフスキーが発案した「交感」概念を言語人類学、とりわけ記号論的視点から再考し、交感性に分析の眼差しを向けることが「やりとりの人類学」における方法論的、理論的枠組みへどのように寄与するのかを考察する。ヤコブソンのコミュニケーション「機能」論による記号論的整理を背景に、近年取りざたされつつある交感性に関する議論を鑑みながら、交感性に重点を置く言語観の実例としてアメリカと日本からのケースを紹介する。
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日本の中学生とジェンダー言語イデオロギー
宮崎 あゆみ
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B05-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/23
会議録・要旨集
フリー
本発表では、日本の中学校における長期のエスノグラフィを基に、どのように生徒たちが、いわゆる「女性語」「男性語」から乖離した様々なジェンダー一人称を使用し、自らの多様な一人称実践に解釈を加え、非伝統的なジェンダー言語イデオロギーの意味空間を構築していたかについて分析する。言語の解釈に注目することで、ジェンダー言語イデオロギーがどのように複雑化し、シフトしているのかをつぶさに観察することができる。
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在日パキスタン人バイリンガル児童のウルドゥー語でのやりとり
山下 里香
p.
B06-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/23
会議録・要旨集
フリー
関東首都圏にあるモスク内コミュニティ教室での在日パキスタン人児童の会話から、「民族語」であるウルドゥー語が、いかに用いられ、それがどのような意味をもっているか、ウルドゥー語を交えた児童同士でのやりとりの詳細な分析を通して考察する。一見ウルドゥー語をあまり使っていない児童らにとって、ウルドゥー語は、親世代の権力やイスラーム知識の真正性を象徴しうる言語であるということがわかった。
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越境する人類学徒が越境する人々を調査すること
加藤 恵津子, クリーエン スザンヌ, 堀口 佐知子, 青山 玲二郎
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B07-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/23
会議録・要旨集
フリー
「自省性」と「越境」はポスト近代のキーワードであり、人類学徒にとっては、対象を分析するだけでなく自己を定義するツールにもなる。本パネルでは、自省的・越境的な四人の研究者が、越境する人々(移民など)の自省性の研究を通してこれら二つの概念を吟味する。ポストモダニストが人間の経験の均質化を強調するのに抗い、本パネルは、人間の自省性がいかに文化に則し続けるかについて、繊細なアプローチを試みる。
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ポストモダン時代の日本人移動者の自省性にみる言語-文化の影響
加藤 恵津子
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B08-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/23
会議録・要旨集
フリー
本発表では、就職氷河期に就職しながらも20代後半に職を辞し、日本からカナダ、オーストラリアへと渡り、一時滞在を延長する、日本生まれ・育ちの若者へのインタビューに基づき、彼/女らの自省的な語りが、どのような点で日本語-日本文化の影響を受けているのか、また彼/女らの自己観は、英語圏環境や、他国から流入する若者との接触によって、どのように変化する(あるいはしない)のかを、「自分探し」を切り口に論じる。
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Self-reflexivity and changing self-views of mobile Japanese youth in Japan and Europe
スザンネ クリーン
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B09-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/23
会議録・要旨集
フリー
This ethnographic paper discusses the daily lives, experiences and narratives of Japanese individuals between 20 and 40 who have migrated either within Japan or to the European Union, mostly Germany, in order to pursue distinctly alternative lifestyles that emphasize self-realization. The paper also aims to examine the relationship between the researcher and researched in ethnographic studies.
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Japanese corporate expatriates in Guangzhou (広州) and the Sino-Japanese tensions in the East China Sea
青山 玲二郎
p.
B10-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/23
会議録・要旨集
フリー
This paper examines the self-reflexive processes of Japanese corporate expatriates in Guangzhou in the course and in the aftermath of the outbreak of Sino-Japanese tensions in the East China Sea in 2012. Although the tensions served as a watershed in their self-perception as Japanese, the physical crossing of international borders does not necessarily entail the emergence of transnational identity
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JETプログラムをきっかけに来日した外国人日本研究者の語りをめぐって
堀口 佐知子
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B11-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/23
会議録・要旨集
フリー
本発表では、JETプログラム(外国語青年招致事業)への参加を機に来日し、その後日本に研究職を得た、30代~50代の英語圏出身の外国人日本研究者に対するインタビューをもとに、彼ら・彼女らか越境し、異国・異文化である日本社会においてキャリアを構築する過程でどのように自己を理解し、自己の変容を捉えているのかについて、日本と英米圏における個人観・人格観を参照しながら考察することとする。
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人類社会における贈与・交換・分配・再分配の再検討
岸上 伸啓, 丹羽 典生, 立川 陽仁, 山口 睦, 藤本 透子
p.
B12-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/23
会議録・要旨集
フリー
本分科会では、マルセル・モースの贈与論の特徴を概略し、それが文化人類学においてどのような理論的展開をみてきたかを紹介する。その上で、アラスカ北西地域、カナダ北西海岸地域、オセアニアのフィジー、日本、中央アジアのカザフスタンにおける贈与交換の事例を検討することによって、モースの贈与論の限界と可能性を検証する。さらに、近年の霊長類学や進化生態学の成果を加味し、人類にとって贈与とは何かを考える。
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アラスカのイヌピアット社会を事例として
岸上 伸啓
p.
B13-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/23
会議録・要旨集
フリー
本発表では、モースの贈与論およびそれ以降のその人類学的展開を概略したうえで、アラスカの捕鯨民イヌピアットによる鯨肉の分配を事例として、モースの贈与論を検証する。人類がモノや食物を他者に与える行為は、現世人類が進化の途上で獲得した利他性に基づいており、交換という行為の前提である。したがって、人間とは与える(もしくは、与えることができる)動物だという人間観を提唱する。
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フィ ジーにおける贈与関係の変遷
丹羽 典生
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B14-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/23
会議録・要旨集
フリー
モースの贈与論においてオセアニアの交換の事例は重要な意味を持ってきた。本発表では、贈与論のなかで言及されながらも、あまり分析の素材とされてこなかったオセアニア・フィジーのヴァスという贈与の関係について扱う。もともと母方親族との贈与関係としてクラン間戦争と関わっていたヴァスが、植民地化による戦争の終結と多民族化及び混血の結果、少数民族による権利の主張の受け皿となっていることを検討する。
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立川 陽仁
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B15-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/23
会議録・要旨集
フリー
本発表では、北米、北西海岸先住民がおこなってきたポトラッチについて、2つの点を検討する。1つには、研究史は「ポトラッチとは何か」という問題にいかに対応してきたのか。もう1つは、研究史はポトラッチでおこなわれる経済行為をどう解釈してきたのか。
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神・死者・生者の関係に着目して
藤本 透子
p.
B16-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/23
会議録・要旨集
フリー
モースは、喜捨は神への贈与の代わりに社会的弱者に贈与することであるとして、イスラーム社会における喜捨を社会全体に関わる贈与の一形態として捉えた。本発表では、カザフスタンの死者儀礼における喜捨を取り上げ、喜捨がどのような意味をもちいかなる社会関係を作り出すのかをとおして、一方的に見える贈与がなぜ行われるのかを考える。特に、神・死者・生者の関係に着目して、喜捨がもつ意味を明らかにする。
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20世紀前半の婦人会活動を事例として
山口 睦
p.
B17-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/23
会議録・要旨集
フリー
本研究は日本社会における災害支援とはどのようなものなのか、20世紀前半の婦人会組織を事例として検討する。地震や津波、台風などの自然災害が起ったとき、被災地や被災者に向けて贈られる膨大な労働力、物資、金は、見返りを期待しない一方的な贈与であると考えられているが、本当にそうだったのか。災害支援の応答性や、記名した支援物資が被災者と支援者を結びつけ、新たなる互酬関係を作り出す様を描き出すことを目的とする。
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台湾、対馬、沖縄を事例に
上水流 久彦
p.
B18-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/23
会議録・要旨集
フリー
東アジアの観光を事例に観光の現場で生まれる摩擦や葛藤に注目し、従来のホスト・ゲスト像を批判的に再考し、両者の接触過程が、両者を取り巻く政治状況に如何に影響され、また接触の結果が、ホストとゲストを取り巻く政治状況に如何なる影響を与えるかを明らかにする。その作業を通して、観光の政治学がネーションやナショナリズムといった政治的テーマの人類学的考察に新たな視点を提供するものであることを提示する。
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観光の政治学への人類学的アプローチの試み
沼崎 一郎
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B19-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/23
会議録・要旨集
フリー
本発表では、香港および台湾における近年の中国人観光客の急増という現象を事例として、観光が政治に与える影響と、政治が観光に与える影響とを、個人の「感情生活」に焦点を合わせて考察し、香港と台湾においては、ネーションは「想像の共同体」から感情生活を共有する「現実の共同体」へと変容しつつあり、それにともなってナショナリズムも独立国家への希求から感情生活の保全へと変容しつつあるという分析を示す。
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韓国人による対馬観光を事例として
中村 八重
p.
B20-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/23
会議録・要旨集
フリー
本発表は、韓国からの観光誘致に地域振興の活路を見出した対馬が、いかに韓国人観光客を受いれてきたか、日韓交流事業との連関を通じて振り返り、この変遷を韓国人に対する認識の変遷として再構成すると同時に「嫌韓」感情との関連は如何なるものであるのか考察することを目的とする。対馬の韓国人による観光を中心に、韓国への感情について論じるには、対馬の韓国との観光誘致以前から、あるいはそれと平行して行われていた民間、行政によるさまざまな国際交流の存在を忘れてはならない。中でも朝鮮通信使を題材にした交流事業は対馬の地域特性と関わり、韓国との関係を考えさせるものである。本発表では、観光誘致の変遷と供に、2012年に起きた「仏像盗難事件」に端を発する朝鮮通信使再現行列の中止決定とその後の過程を検討し、日韓の政治的な緊張関係が対馬における韓国への認識に与える影響を考察する。
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~ネーションなのか、感情なのか~
上水流 久彦
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B21-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/23
会議録・要旨集
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観光客に対して「私たちと異なる」という批判が台湾でも対馬でも見られる。だが、台湾では観光の現場を通じて中国と台湾を一緒の国とする想像の共同体が壊されたのに対して、対馬では韓国とは異なるネーションであることを再確認されていた。類似した批判でも意味は両者によって異なる。この二つ事例はホストとゲストの関係を両者の権力性や文化の真正性だけでなく、国家間関係等のその外部と結び付けて論じる必要性を示している。
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ポスト基地社会の消費増大にむけた開発との連関
越智 郁乃
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B22-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/23
会議録・要旨集
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本発表では、戦後沖縄の観光開発の歴史を踏まえた上で、近年の台湾人をはじめとした外国人観光客の動きに注目する。そして、観光開発とポスト基地社会における「日本」からの自立経済にむけた動きを重ね合わせたときに、「沖縄」にとって「観光」や「観光客」がどのような存在とみなされるのかということについて考察を加える。
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「遺伝子が組み換え」られたケニア・エンブ社会
松岡 陽子
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C01-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/23
会議録・要旨集
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近代化の議論において、社会変化のベクトルは既存社会の外部からやってきて内部に影響をもたらすという図式が多い。しかしエンブ社会では、数十もの村落にある「ゲサギ」というスラム地区の存在が核となり、近代化と呼応しながら、社会変化のベクトルは内部から外部に向かっている。ここではその社会変化の過程を「遺伝子組み換え」社会と呼び、論じる。
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―夫婦関係と家の秩序に関する雲南ラフの語りと実践―
堀江 未央
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C02-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/23
会議録・要旨集
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本発表では、中国雲南省からミャンマー・タイに広がる山地に居住するラフの「家神」の観念について論ずる。ラフの宗教研究において体系的に論じられてこなかったこの観念の比較分析を通じて、それが夫婦関係に基づく家屋の秩序に大きく関わっていることを提示する。その上で、雲南ラフのあいだで家神が語りのなかに表出する具体的場面を取り上げ、近年の中国における家族形態の変容が家神との関わりでいかに解釈されるかを論ずる。
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移住労働者から結婚移民となったタイ人女性とベトナム人女性の事例から
徐 幼恩
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C03-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/23
会議録・要旨集
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近年東南アジア系女性結婚移民や移住労働者の大量の流入により、台湾は世界的にも、「国際移動の女性化」の加速化が顕著な地域とされている。こうした越境結婚では、持参財の欠如による婚資不均衡という背景で、結婚移民が「買ってきた嫁」という汚名が着せられ、貧困や家父長制の「犠牲者」と見なされる場合が多い。本稿は移住労働を契機として、越境結婚を選択した女性たちの主体性を考察することを目的としている。本稿の二人とも「売買婚」の被害者ではなく、経済格差による移動を強いられた「犠牲者」でもなく、人生の逆転を果たすために、自ら移住労働を選択し、越境結婚を生存戦略として選択した。自ら築いたネットワークを活用しながら、ホスト社会に直面した諸困難を克服してきた能動的な行為者と解釈できる。そして、都市部の越境結婚は農村部の越境結婚よりも生存戦略が功を奏する可能性が大きく、より主体性を発揮しやすい環境に恵まれている。
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西ネパールの市民権証取得運動の事例より
藤倉 康子
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C04-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/23
会議録・要旨集
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本発表の目的は、ネパール西部のバディ・コミュニティで行われた出生登録・市民権証取得運動において、婚外子とその父親の関係が問題化された過程を明らかにし、そのうえで、共同体再編のプロセスにおける「家族」「結婚」の意味づけの変化を考察することである。
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ネパールで肉売りを担う人びとをめぐる動態
中川 加奈子
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C05-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/23
会議録・要旨集
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本報告では、ネパールで家畜の供犠と肉売りをカーストに基づく役割とするカドギをめぐる社会動態を検討することで、市場化に伴うカースト変容の一端を明らかにする。その際には、これまでの研究が個々の民族やカースト集団によるアイデンティティ政治に注目していたのに対し、アイデンティティが曖昧なままになされる「カースト」という範疇の操作/管理のあり方に着目する。
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中国農村における都市を参照概念とした生活世界の構築についての試論
川瀬 由高
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C06-
発行日: 2016年
公開日: 2016/04/23
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本発表では中国南京市の自然村での調査中に出くわした「トマト」についての奇妙な語りの読み解きから、農村居住民の生活世界の構築について試論を展開する。分析を通し、都市は「参照概念」として言及され、またその際には「カネへの言及」(いくらで買えるか等)が頻発することを明らかにする。また、金額という統一基準を信頼するかのような言語実践には、多様かつ巨大な社会のなかで暮らす者にとり一定の機能があると主張する。
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