抄録
本発表は、東日本大震災で被災したエスニック・マイノリティの記憶が社会と地域にどのように伝達され、彼らコミュニティ活動にどう影響されるのかを明らかにすることで、エスニック・マイノリティの災害記憶の継承の課題を問う。社会の中でマジョリティの目を意識して生活しているエスニック・マイノリティ集団の中で働く被災記憶の共有、封印について、移民コミュニティへの聞き取り調査とメディアでの記事、及び証言録などを通じて分析する。本研究は、マイノリティ・コミュニティという小集団の中で生じている集合的記憶の選別を通して、日本のマジョリティ社会の課題を投影することができる。さらに、調査対象者の記憶や体験を消費している主体とも言える研究者の姿勢を問いかけるものにもなるだろう。