禁煙科学
Online ISSN : 1883-3926
全国国立大学法人における喫煙対策調査(2006 年度調査)
中井 久美子 高橋 裕子清原 康介苗村 育郎立身 政信寺尾 英夫吉原 正治杉田 義郎守山 敏樹鎌野 寛森岡 洋史池谷 直樹辻井 啓之山縣 然太郎
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2008 年 vol.2 巻 04 号 p. 9-14

詳細
抄録
背景:近年の喫煙率の傾向として、男性の喫煙率は低下しているのに比べ、20~30歳代の女性の喫煙者率は増加向にある。これまでの先行研究において、女性のニコチン依存は、喫煙本数を主体としたFagerstr?m Test for Nicotine Dependence(FTND)等で評価されており、ニコチン依存は低いとされてきた。一方2006年より健康保険適用の禁煙治療が制度化され、ニコチン依存症の診断にTobacco Dependence Screener(TDS)が使用されていることから、FTND、TDS、喫煙本数の少ない若年者向けに開発されたHooked on Nicotine Checklist(HONC)の一部を用いて20~30歳代の女性喫煙者のニコチン依存の現状を分析することと禁煙に対する意思との関連要因を検討することを目的とした調査を行った。
方法:2007年7月から2008年4月の間に、国立病院機構京都医療センター禁煙外来を新規受診して同意した患者65例(連続症例)を対象にSDSテストを施行した。精神疾患の既往、精神科あるいは心療内科受診歴のある患者は除外した。SDSスコア39点以上47点以下を正常/神経症境界、48点以上を神経症/うつ病とした。
結果:禁煙成功率は正常群 (n=29) 69%に対し、正常/神経症境界群 (n=17) 35% (P = 0.030)、神経症/うつ病群 (n=19) 21% (P = 0.002)と、うつ状態の程度に従い禁煙成功率は顕著に低下した。初診時の性別、年齢、喫煙開始年齢、喫煙年数、1日の喫煙本数、ブリンクマン指数(喫煙本数/日×年数)、ニコチン依存度の指標であるFTNDスコア及びTDSスコア、禁煙の自信度、SDSスコアを変数とした多重ロジスティック回帰分析の結果、12週後の禁煙成否を規定する唯一の独立因子がSDSスコアであった(P = 0.032, OR: 0.927, CI: 0.866-0.993)。
結論:初診時のうつ状態は短期的禁煙成功率に深く関連し、SDSスコアは短期禁煙達成成否を規定する最も強力な因子であった。潜在的うつ状態の存在が禁煙の最大の妨げであることが明らかとなった。
著者関連情報
© 2008 日本禁煙科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top