抄録
背景:喫煙防止教育の有効性については肯定的な意見がある一方で,否定的な見解もある.今回児童への禁煙指導の有用性を検証するため,小学6年生に禁煙教育を行い3年後の喫煙行動を検討した。
方法:2000年12月に金沢市内の小学校で6年生を対象に禁煙指導を行った.その生徒の半数ほどが進学した中学で,喫煙防止教育を受けた生徒(有り群)と他の小学校から進学し禁煙指導が無かった生徒(無し群)を対象に,中学3年時にアンケート調査を行い両群の喫煙行動を比較検討した.
結果:生徒数は有り群74(女36,男38)名,無し群191(女91,男100)名であった.「一度でもたばこを吸ったことがある」試し喫煙以上は71(女28,男43)名で,喫煙経験率は有り群17.6%,無し群30.4%で,有り群が有意に低かった(p=0.036<0.05).喫煙開始時期は小4以前から散見されたが,6年が14%で中1は44%と約半数を占め,中2も16%で中1付近に集中していた.喫煙頻度は「一度だけ」が約7割を占めたが,「週1~2回以上」6%,「ほぼ毎日」が17%で,「お試し群」と「依存群」の二極化がみられた.動機は「友達に勧められた」が最多で4割近くを占め,次に「大人の喫煙を見て」が20%だった.たばこの入手経路は男女共に「友人から」が最も多く,次いで「自販機」で,この二つで半数以上を占めた.
結論:小6での禁煙教育が3年後の喫煙経験率を有意に低下させ有用であった.喫煙開始時期は小6から増え始め中1が最も多いことから,禁煙指導は小学6年生に行うのが有用と考えられた.喫煙頻度からは「お試し群」と「依存群」の二極化がみられ,若年のニコチン依存が懸念されるとともに,お試し群を生じさせない禁煙教育が肝要と思われた.動機やたばこ入手は「友人から」が最も多く,自己判断能力の向上を目指した禁煙指導が重要である.