禁煙科学
Online ISSN : 1883-3926
働く世代の男性の禁煙が体重の減量意識の変化に及ぼす影響
富永 典子 高橋 裕子
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ジャーナル オープンアクセス

2010 年 vol.3 巻 03 号 p. 23-29

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抄録
目的:健康寿命の延伸や医療費の適正化には、肥満の更正や運動習慣の獲得に加えて喫煙対策が重要である。禁煙は、最も重要な疾病予防の単独因子である一方、禁煙後の体重増加は禁煙開始、または禁煙の継続を困難にする要因としての指摘がある。2008年度からメタボリックシンドロームに特化した対策が実施され、その中では個々の行動変容ステージに即した支援が推奨されている。そこで本研究では、働く世代の男性の禁煙が体重の減量意識の変化に及ぼす影響について検討した。
方法:2004~2007年度の職域での健康診断時にライフスタイル調査(回答率62.0~67.4%)を実施した。2年続けて受診・回答した者のうち、ベースラインで糖尿病、高血圧、脂質異常で治療中、または要治療と判断された者(高血圧;収縮期血圧≧160mmHgまたはかつ拡張期血圧≧100mmHg、耐糖能異常;空腹時血糖≧126mg/dlまたはかつHbA1c≧7.0%)、やせ体型(BMI<18.5kg/m2)の者を除いた男性1,095名(年齢42±10歳、BMI 23.5±2.9 kg/m2)を解析対象とした。1年後の喫煙習慣の変化によって、対象を①非喫煙群(418名)、②喫煙継続群(603名)、③禁煙群(43名)、④再喫煙群(31名)の4群に分けた。調査では、減量意識に関するステージと、生活習慣(喫煙、朝食、間食、脂肪、野菜、睡眠時間、運動習慣、飲酒、主観的ストレス感)について質問した。ベースラインでは、喫煙継続群に比べ非喫煙群の年齢と健康習慣数が有意に多かったが、それ以外には4群間で有意な差は認められなかった。
ベースラインと1年後の健康習慣数の変化について4群間で多重比較をした。前熟考期から1年後に準備期または行動期に、または熟考期から1年後に準備期または行動期へ、または準備期から1年後に行動期に進んだ場合を上位変化群、それ以外を対照群として、ベースラインと1年後の健康習慣数の変化について、4群それぞれにおいて上位変化群と対照群とを比較検討した。
結果:ベースラインから1年後の健康習慣数の変化に4群間で有意な差は認められなかった(非喫煙群0.01±1.53、喫煙継続群-0.07±1.43、禁煙群0.09±1.62、再喫煙群0.13±1.44)。 ベースラインから1年後への減量意識ステージの変化をみると、ベースラインと1年後ともに前熟考期であった者は、非喫煙群59.6%、喫煙継続群68.9%、禁煙群55.5%、再喫煙群62.5%で、禁煙群が最も少なかった。また熟考期から1年後に準備期または行動期に進んだ者は、非喫煙群26.8%、喫煙継続群31.6%、禁煙群50.0%、再喫煙群37.5%で、準備期から1年後に行動期に進んだ者は、非喫煙群;17.2%、喫煙継続群18.4%、禁煙群36.5%、再喫煙群16.7%で、1年後に上位ステージに進んだ者はいずれの場合も禁煙群が4群の中で最も多かった。 4群それぞれで上位変化群と対照群とを比較したところ、禁煙群と非喫煙群で、対照群に比べ上位変化群の1年後の健康習慣数が有意に増加し、喫煙継続群と再喫煙群では両群に有意な差は認められなかった。
結論:働く世代の男性の禁煙は、体重減量に対する意識を高揚させることに影響することが示唆された。
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© 2010 日本禁煙科学会
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