禁煙科学
Online ISSN : 1883-3926
vol.3 巻, 03 号
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  • 松本 泉美, 久井 志保, 高橋 裕子
    2010 年vol.3 巻03 号 p. 1-13
    発行日: 2010年
    公開日: 2021/11/04
    ジャーナル オープンアクセス
    目的:職域での喫煙対策推進および効果的な禁煙支援に活かすことを目的として労働者の保健行動と喫煙状況、特にTDSによるニコチン依存度との関連性を調査した。
    方法:A・B事業所従業員全員(317名)を対象として、無記名自記式質問紙調査票を配布、回収した。調査内容は、主観的健康観と保健行動の実施状況・喫煙状況および今後の喫煙対策への意識であり、それらについて「非喫煙」・「過去喫煙」・「現在喫煙」の3群に分けて分析した。またニコチン依存の評価としてFagerstr?m Test for Nicotine Dependence(FTND)およびTobacco Dependence Screener(TDS)を用い、年代別性別のニコチン依存の状況および禁煙への意思への関連因子について分析した。
    結果:回収数302名、その内有効回答は295名で、有効回答率は97.7%であった。喫煙率は、男性52.7%、女性21.1%であった。TDSスコア5点以上の「ニコチン依存症」に該当する喫煙者は、「主観的健康感」で健康であると感じている者が非喫煙者や過去喫煙者より少なく、「自覚症状あり」「仕事以外で感じるストレス」が有意に高かった。また保健行動の取り組み状況は、喫煙者は非喫煙者および過去喫煙者に比べ有意に低かった。ニコチン依存度の状況では、20~30歳代の女性喫煙者は、同年代の男性に比べ有意にTDSスコアが高く、若い女性喫煙者は喫煙本数が少なくても「ニコチン依存症」の状態であることが示唆された。ロジスティック回帰分析による禁煙の意思に有意に関連したのはTDSであった。
    結論:TDSスコアによるニコチン依存度が高い者には、健康状態や自覚症状やストレスの状況が関連しており、また性差では、若い女性の喫煙者はTDSを指標としたニコチン依存が高いことが明らかとなった。
  • 富永 典子, 高橋 裕子
    2010 年vol.3 巻03 号 p. 14-22
    発行日: 2010年
    公開日: 2021/11/04
    ジャーナル オープンアクセス
    目的:健康寿命の延伸や医療費の適正化には、肥満の更正や運動習慣の獲得に加えて喫煙対策が重要である。2008年度からメタボリックシンドロームに特化した対策が医療保険者に義務化となり、その中では、特定保健指導の選択条件に喫煙習慣が加わり、禁煙推進もまたこの対策の要となった。しかしながら一方では、禁煙後の体重増加は禁煙開始、または禁煙の継続を困難にする要因としての指摘がある。そこで本研究では、禁煙が体重増加および肥満関連指標に及ぼす影響について検討を行った。
    方法:2004~2007年度の職域での健康診断時にライフスタイル調査(回答率62.0~67.4%)を実施した。2年続けて回答した者のうち、ベースラインで糖尿病、高血圧、脂質異常で治療中、または要治療と判断された者、臨床上、減量の必要性がないやせ体型(BMI<18.5kg/m2)の者を除いた男性1,095名(年齢42±10歳、BMI 23.5±2.9 kg/m2)を解析対象とし、1年後の喫煙習慣の変化により①非喫煙群(418名)、②喫煙継続群(603名)、③禁煙群(43名)、④再喫煙群(31名)の4群に分けた。調査では、減量意識ステージと、生活習慣(喫煙、朝食、間食、脂肪、野菜、睡眠時間、運動習慣、飲酒、主観的ストレス感)について質問した。減量意識ステージが1年後に上位ステージの準備期または行動期に進んだ場合を上位変化群、それ以外を対照群とし、1年後の体重変化について各4群で上位変化群と対照群とを比較検討した。1年後の体重変化と、BMIおよび各肥満関連指標、リスク構成因子数(高血圧、脂質異常、耐糖能異常の3項目の有所見数)、健康習慣数の1年後の変化との相関関係を検討し、そして全項目について4群間で比較検討した。各群の体重変化に関与する生活習慣の変化を検討するため、1年後の体重変化を従属変数、喫煙習慣を除く各生活習慣の変化を説明変数とした重回帰分析を行なった。
    結果:非喫煙群および喫煙継続群では、1年後の減量意識ステージが上位の準備期または行動期に進んだ上位変化群の体重は対照群に比べ有意に減少したが、禁煙群および再喫煙群では有意な変化は認められなかった。非喫煙群と喫煙継続群では、1年後の体重増加と拡張期血圧および収縮期血圧、肝機能、総コレステロール、中性脂肪、リスク構成因子数が有意な正の相関関係に、HDLコレステロールが有意な負の相関関係にあった。禁煙群では、GPTおよびγ-GTP、HbA1c、総コレステロール、リスク構成因子数、健康習慣数が体重増加と有意な正の相関関係となり、再喫煙群では、GPTおよびγ-GTP、総コレステロールの値が体重増加と有意な正の相関関係となった。非喫煙群に比べ禁煙群の1年後の体重およびBMI、γ-GTPが有意に増加した。また空腹時血糖値は、禁煙群が非喫煙群および喫煙継続比べ有意に増加したが、HbA1cの変化に4群間で有意な差は認められなかった。健康習慣数およびリスク構成因子数の変化に4群間で有意な差は認められなかった 重回帰分析の結果、1年後の体重減少に関与する有意な要因として、全体では「脂肪をひかえた食事」および「多大な主観的ストレス感」の増加が、非喫煙群では「脂肪をひかえた食事」および「1日平均9時間以内の労働時間」および「多大な主観的ストレス感」の増加が、喫煙継続群では「間食はほとんどとらない」および「脂肪をひかえた食事」および「適度な運動習慣」の増加が認められた。禁煙群では、「節制飲酒」および「適度な運動習慣」の増加が体重増加と影響していたが、分散分析では有意差は認められなかった。再喫煙群では、体重増減に関する有意な生活習慣の変化は認められなかった。
    結論:禁煙後のメタボリックシンドロームのリスク構成因子を悪化させる体重増加には、年齢や飲酒習慣を含めた食習慣や運動習慣など禁煙以外の生活習慣の変化による影響が大きいことが示唆された。
  • 富永 典子, 高橋 裕子
    2010 年vol.3 巻03 号 p. 23-29
    発行日: 2010年
    公開日: 2021/11/04
    ジャーナル オープンアクセス
    目的:健康寿命の延伸や医療費の適正化には、肥満の更正や運動習慣の獲得に加えて喫煙対策が重要である。禁煙は、最も重要な疾病予防の単独因子である一方、禁煙後の体重増加は禁煙開始、または禁煙の継続を困難にする要因としての指摘がある。2008年度からメタボリックシンドロームに特化した対策が実施され、その中では個々の行動変容ステージに即した支援が推奨されている。そこで本研究では、働く世代の男性の禁煙が体重の減量意識の変化に及ぼす影響について検討した。
    方法:2004~2007年度の職域での健康診断時にライフスタイル調査(回答率62.0~67.4%)を実施した。2年続けて受診・回答した者のうち、ベースラインで糖尿病、高血圧、脂質異常で治療中、または要治療と判断された者(高血圧;収縮期血圧≧160mmHgまたはかつ拡張期血圧≧100mmHg、耐糖能異常;空腹時血糖≧126mg/dlまたはかつHbA1c≧7.0%)、やせ体型(BMI<18.5kg/m2)の者を除いた男性1,095名(年齢42±10歳、BMI 23.5±2.9 kg/m2)を解析対象とした。1年後の喫煙習慣の変化によって、対象を①非喫煙群(418名)、②喫煙継続群(603名)、③禁煙群(43名)、④再喫煙群(31名)の4群に分けた。調査では、減量意識に関するステージと、生活習慣(喫煙、朝食、間食、脂肪、野菜、睡眠時間、運動習慣、飲酒、主観的ストレス感)について質問した。ベースラインでは、喫煙継続群に比べ非喫煙群の年齢と健康習慣数が有意に多かったが、それ以外には4群間で有意な差は認められなかった。
    ベースラインと1年後の健康習慣数の変化について4群間で多重比較をした。前熟考期から1年後に準備期または行動期に、または熟考期から1年後に準備期または行動期へ、または準備期から1年後に行動期に進んだ場合を上位変化群、それ以外を対照群として、ベースラインと1年後の健康習慣数の変化について、4群それぞれにおいて上位変化群と対照群とを比較検討した。
    結果:ベースラインから1年後の健康習慣数の変化に4群間で有意な差は認められなかった(非喫煙群0.01±1.53、喫煙継続群-0.07±1.43、禁煙群0.09±1.62、再喫煙群0.13±1.44)。 ベースラインから1年後への減量意識ステージの変化をみると、ベースラインと1年後ともに前熟考期であった者は、非喫煙群59.6%、喫煙継続群68.9%、禁煙群55.5%、再喫煙群62.5%で、禁煙群が最も少なかった。また熟考期から1年後に準備期または行動期に進んだ者は、非喫煙群26.8%、喫煙継続群31.6%、禁煙群50.0%、再喫煙群37.5%で、準備期から1年後に行動期に進んだ者は、非喫煙群;17.2%、喫煙継続群18.4%、禁煙群36.5%、再喫煙群16.7%で、1年後に上位ステージに進んだ者はいずれの場合も禁煙群が4群の中で最も多かった。 4群それぞれで上位変化群と対照群とを比較したところ、禁煙群と非喫煙群で、対照群に比べ上位変化群の1年後の健康習慣数が有意に増加し、喫煙継続群と再喫煙群では両群に有意な差は認められなかった。
    結論:働く世代の男性の禁煙は、体重減量に対する意識を高揚させることに影響することが示唆された。
  • 遠藤 將光
    2010 年vol.3 巻03 号 p. 30-34
    発行日: 2010年
    公開日: 2021/11/04
    ジャーナル オープンアクセス
    背景:喫煙防止教育の有効性については肯定的な意見がある一方で,否定的な見解もある.今回児童への禁煙指導の有用性を検証するため,小学6年生に禁煙教育を行い3年後の喫煙行動を検討した。
    方法:2000年12月に金沢市内の小学校で6年生を対象に禁煙指導を行った.その生徒の半数ほどが進学した中学で,喫煙防止教育を受けた生徒(有り群)と他の小学校から進学し禁煙指導が無かった生徒(無し群)を対象に,中学3年時にアンケート調査を行い両群の喫煙行動を比較検討した.
    結果:生徒数は有り群74(女36,男38)名,無し群191(女91,男100)名であった.「一度でもたばこを吸ったことがある」試し喫煙以上は71(女28,男43)名で,喫煙経験率は有り群17.6%,無し群30.4%で,有り群が有意に低かった(p=0.036<0.05).喫煙開始時期は小4以前から散見されたが,6年が14%で中1は44%と約半数を占め,中2も16%で中1付近に集中していた.喫煙頻度は「一度だけ」が約7割を占めたが,「週1~2回以上」6%,「ほぼ毎日」が17%で,「お試し群」と「依存群」の二極化がみられた.動機は「友達に勧められた」が最多で4割近くを占め,次に「大人の喫煙を見て」が20%だった.たばこの入手経路は男女共に「友人から」が最も多く,次いで「自販機」で,この二つで半数以上を占めた.
    結論:小6での禁煙教育が3年後の喫煙経験率を有意に低下させ有用であった.喫煙開始時期は小6から増え始め中1が最も多いことから,禁煙指導は小学6年生に行うのが有用と考えられた.喫煙頻度からは「お試し群」と「依存群」の二極化がみられ,若年のニコチン依存が懸念されるとともに,お試し群を生じさせない禁煙教育が肝要と思われた.動機やたばこ入手は「友人から」が最も多く,自己判断能力の向上を目指した禁煙指導が重要である.
  • -大学生喫煙者の喫煙実態と喫煙経費限界意識について-
    東山 明子, 津田 忠雄, 高橋 裕子
    2010 年vol.3 巻03 号 p. 35-40
    発行日: 2010年
    公開日: 2021/11/04
    ジャーナル オープンアクセス
    背景:大学生の喫煙の実態については調査が行われているものの、喫煙限界意識についての調査やタバコ価格との関連についての報告はみられない。そこで、大学生喫煙者の実態と喫煙経費限界意識について調査を行った。
    方法:2年次生対象の体育理論講義中に、調査主旨を説明し、承諾を得られた学生を対象にアンケート用紙を配布し、記入後その場で回収した。
    結果:337名の大学生中喫煙学生は15%の53名であった。喫煙開始年齢は16.98±3.06歳、一日喫煙本数は8.96±7.47本であり、一日の限界本数は16.08±11.88本であった。その理由は健康上の理由だけではなく、お金がもったいない等の経済的理由もあげられた。一日のタバコにかける費用は160±166円であり、タバコにかけられる金額の上限は350±345円であった。タバコ一箱にかける費用は236±129円であり、タバコ一箱にかけられる上限費用は490±302円であった。
    結論:20歳前後の一般大学生の喫煙理由は成人喫煙率よりも低く、喫煙開始年齢はばらつきが大きいものの20歳に比較的近い年齢から始まっていた。一日当たりの吸う本数は概ね一箱以内であり、健康上の理由だけではなく軽税的理由によってもその限界を決めていた。喫煙にかける費用は500円未満であり、上限費用も500円が最も多く、さらに全く費用をかけない喫煙者もみられた。大学生の喫煙にはタバコ価格が廉価であることが関連していることや、500円を超えるタバコ価格の値上げが大学生の喫煙を抑制する可能性が示唆された。
  • 王 宝禮, 荒 敏明, 伊藤 公一, 高橋 裕子
    2010 年vol.3 巻03 号 p. 41-52
    発行日: 2010年
    公開日: 2021/11/04
    ジャーナル オープンアクセス
    背景:最近、歯科医師・歯科衛生上が禁煙指導を行うことを目的として日本禁煙科学会に歯科分科会が設置された。禁煙指導を行う上で、学生のときから喫煙の有害性および悪影響について十分に理解することが非常に重要であるため、教育機関がどのように喫煙・禁煙問題に取り組んでいるかについて質問表による調査を行った。
    方法:全国の大学歯学部・歯科大学(以下「歯学部」と統一表記)29校および大学・短期大学などの歯科衛生上学校150校、合計179校に喫煙環境、喫煙・禁煙教育の状況、講義内容およびその様式、喫煙・禁煙教育を行う上での障壁およびその解決法に関する質問表を送付し、回答のあった質問表を調査対象とした。
    結果:ほとんどの学校で禁煙・分煙としていることから受動喫煙に対する意識が高まっていると考えられた。講義様式として座学が多く臨床実習が少ないことから、実際の禁煙指導よりも喫煙・禁煙に関して知識として教えていると考えられた。喫煙・禁煙教育の障壁として「時間不足・人材不足」、問題解決法として「トレーニング受講の義務化」があり、禁煙指導を行う人材を積極的に育成することが必要であると考えられた。
    結論:ほとんどの学校で禁煙・分煙としていることから受動喫煙に対する意識が高まっていると考えられた。講義様式として座学が多く臨床実習が少ないことから、実際の禁煙指導よりも喫煙・禁煙に関して知識として教えていると考えられた。喫煙・禁煙教育の障壁として「時間不足・人材不足」、問題解決法として「トレーニング受講の義務化」があり、禁煙指導を行う人材を積極的に育成することが必要であると考えられた。
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