抄録
発達障害とその周辺の歴史をふりかえり,改めて,現在の発達障害はカテゴリー別に分けられ,境界線が明瞭な疾患単位で理解することが困難となってきていることを提起した.「連続的」である発達障害は神経多様性neurodiversityとして理解される.生命現象は,一つという「斉一性」と多なるという「多様性」からなる存在であるため,個々のニーズに応える「合理的配慮」の困難性も浮き彫りになる.多様性を保障する合理的配慮は,斉一性が強く求められる現代社会ではなかなか成立しにくい.そのため,合理的配慮から互恵的配慮への転回を提案する.互恵的配慮は,あとで見かえりがあると期待されるために,ある個体が他の個体の利益になる行為を即座の見かえりなしで行う利他的行為である.その配慮を発達障害支援に重ねると,個々の発達特性の理解には相手を知りたいと強く思うことが求められ,個々に有益な環境調整には,協力関係と共感が,
そして支援を受ける側と行う側の情緒的合意には,感謝と信頼が求められる.