抄録
日常生活のなかで感情調整は心身の健康を保つために重要な役割を担う.これまで,国内 においては ASD 者を対象として感情調整方略の使用頻度が検討されていない.そこで,本研究は 感情調整の認知的再評価と表出抑制に着目し,1)日本人の ASD 者と TD 者の感情調整方略の使 用頻度の違い,2)感情調整と精神的健康との関連,3)感情調整と認知機能との関連,を検証した. 対象者は ASD 者 34 名(平均年齢 28.8 歳)と TD 者 36 名(平均年齢 28.0 歳)であった.質問紙調査の結果,感情調整の使用頻度は,ASD 群は TD 群に比べ認知的再評価の使用頻度が少なく,表出抑制では差は見られなかった.感情調整と精神的健康との関連について,ASD 群,TD 群とも に表出抑制とネガティブな精神的健康に関連が見られなかった.感情調整と認知機能との関連については,両群で関連が見られなかった.これらの結果から,ASD 者は実行機能や自身の感情の同 定や言語化に障害があるために適応的な感情調整方略の使用頻度が少なく,精神的健康と関連しないことが示唆された.