災害情報
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Print ISSN : 1348-3609
[論文]
漁船の津波沖出し行動に関するルール策定効果の検証
-2011年東北地方太平洋沖地震津波襲来時の根室市落石漁協の対応を事例に-
片田 敏孝村澤 直樹金井 昌信
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2012 年 10 巻 p. 103-112

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抄録

2011年3月,東北地方太平洋沖を震源とする巨大地震が発生し,想定を超える大津波の襲来により,沿岸地域で2万5千隻に及ぶ漁船が被災した.この津波襲来時において,漁船の被害軽減を目的として,多くの漁民が漁船を沖合へ避難させていたが,その最中に被災してしまった事例も確認された.そのため,津波襲来危険時における漁民の安全の確保と漁船の沖合避難に関する対応方針の再検討の必要性が,改めて浮き彫りになったものといえる.

この度の津波襲来以前から,筆者らは津波襲来危険時の漁船の沖出し行動の適正化を目的として,根室市落石地区の漁民を対象に“漁船の避難ルール”を策定してきた.そして,2010年チリ津波襲来時における漁民の対応行動から,その策定効果を明らかにした.しかし,チリ津波は,揺れがなく,津波到達までに数時間の余裕があり,甚大な被害が及ぶ津波も襲来しなかった.そのため,効果検証としては限定的であったといえる.そこで本稿では,東北地方太平洋沖地震に伴う大津波襲来時における漁民の津波沖出し行動を把握することから,策定効果の再検証を試みた.その結果,比較的短時間で大津波が襲来する地震においても,早いタイミングで安全海域まで沖出しを行い,津波の危険性が低くなるまで沖合に待機したという効果が確認された.また,その対応行動実態から,今後の適切な津波沖出し行動を促進するための課題と方策を抽出した.

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© 2012 日本災害情報学会
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