2012 年 10 巻 p. 43-55
災害時の地域社会において、実効性のある災害情報が伝達され、その災害情報が実際に避難のきっかけとなって集団的避難が達成できるかどうかは、その地域の社会関係に依存しているのではないかとの仮説から、本論文では、災害多発地ながら災害情報伝達と避難行動に差異がある鹿児島県垂水市の2地区を研究対象地とし、これらの地区における住民の地域活動や近所付き合い、および災害時に入手する情報チャンネルのあり方が、災害時における避難行動とどのような関係にあるのかについて量的分析を行った。
その結果、集団的避難を達成できる地区の住民は、地域組織に所属するのみならず、実際の地域活動にも積極的に参加しており、そこで生じた社会的接触により、近所付き合いなどインフォーマルな社会関係を深めていた。また、災害情報入手のチャンネルにおいては、避難に際し、フォーマルな情報チャンネルに加え、インフォーマルな社会関係によって形成される情報チャンネルからも多く災害情報を入手していた。さらに避難勧告によって避難する人においては、インフォーマルな情報チャンネルの効果が、避難に対して大きな影響を与えていることが量的分析により示唆された。