2012 年 10 巻 p. 56-67
2008年から国内でのサービスが開始された比較的新しいコミュニケーションツールであるTwitterを災害時の情報発信ツールとして使えるか検討した。2011年3月11日に発生した東日本大震災の際には原発を巡る様々なデマの発信源として指摘されるなど、やや負の側面が強調されてきた感があるが、本論文では、正の側面に注目して分析を行った。
事例として2011年9月2日から4日にかけて関西を中心に通過した台風12号による豪雨災害を取り上げた。日本一大きな村である奈良県十津川村では、一時村全体が孤立し、電気、電話、水道などあらゆるライフラインが数日間機能しなくなった。村に入れないため、既存のマスコミによる報道も空からの映像などが多く、何が起こっているのか分からない状態が続いた。
その中で災害情報発信の大きな役割を果たしたのがTwitterであった。一般の人が今回の災害用に作った緊急アカウントに対して様々な情報が寄せられ、そこから地図上に情報を整理する者も現れた。それにより十津川村における被災の状況や人々の様子が徐々に明らかになった。この現象はマスコミにも取り上げられ、さらに広く知られる要因になった。
この事例から、Twitterが災害初期段階において情報を発信し、集約し、整理して再び伝えるという重要な役割を担ったことが指摘でき、さらに信頼性や伝播力などを検討した結果、情報が少なく状況が分からない災害初期段階において、きわめて有益である可能性が示された。