災害情報
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Print ISSN : 1348-3609
[論文]
南海トラフの巨大地震・津波を想定した防災意識と避難行動に関する住民意識調査
孫 英英矢守 克也谷澤 亮也近藤 誠司
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2013 年 11 巻 p. 68-80

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抄録

東日本大震災の発生によって、南海トラフの巨大地震・津波による被害が予想される地域でも、従前の津波防災対策の効果性に大きな疑問符が付されることになった。大震災のインパクトは主に3つの観点から整理できる。第1は、津波避難に関わる個別の課題が具体的に浮き彫りになったことである。第2は、大震災後、国や自治体が津波に関する「想定」を見直したことである。第3は、これらの地域で津波警報等が発令されたにもかかわらず、避難率は必ずしも高くなかったことである。本研究は、こうした地域の一つで筆者らが大震災以前から津波防災の実践に関与してきた興津地区において、大震災によって示唆された課題について上記の3つの側面に注目して検討したものである。同地区で行われた質問紙調査の結果によると、避難場所などハード施設の整備、および、学校と地域社会の連携による津波対策が、「県下随一の防災先進地」と称されるほど進展していた。しかし一方で、既存の防災施設への過度な依存、「津波てんでんこ」の原則の不徹底、「想定」の見直しに伴う不安感など、いくつもの課題が依存残存することが分かった。これらの課題を解消するためには、住民一人ひとりの避難を「個別具体的に」検討する必要性があり、そのための試みとして、「個別訓練タイムトライアル」の手法を提案した。

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© 2013 日本災害情報学会
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