本研究の目的は、住民調査結果をもとに、「東日本大震災が発生した当日から1ヶ月の間に、被災した仙台市民が病院や診療所についてどのような支障に直面したのかを、経時的に明らかにすること」、である。
住民調査の方法は、地震が発生した2011年3月11日の震災後も仙台市内で生活し、かつ震災時に津波の被害を受けていない宮城県仙台市内在住の20歳から80歳の男女個人を対象として、Webアンケート方式で行った。
調査の結果、震災発生後から時間が経過するにつれて、病院や診療所についての情報ニーズはあるものの入手できていない割合は漸減傾向にあった。震災前から通院している人々の方が「通院支障」に直面する割合が高く、その意味で脆弱性があると考えられる。「健康悪化の不安」は時期が経過するにしたがって増加しているものの、「通院支障」とは関連性がなく、むしろ原子力発電所の事故への不安との関連性があった。
開いている病院・診療所の情報の普及が進むと「通院支障」を解消する方向に向かうことが示唆され、情報伝達の重要性が確認された。「通院支障」の項目として、「どこに行けばよいのかわからない」被災者が多かったが、彼らが地域の災害拠点病院に集中することは避ける必要がある。そのために、単に開いている病院・診療所の情報を伝達するのではなく、症状などに応じて向かうべき適切な病院・診療所がわかるような情報を発信することが重要であると考えられる。
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