2016 年 14 巻 p. 105-115
大規模河川の氾濫が予測されると、市町村内全域に避難勧告や避難指示が発令されるケースがある。盆地のように洪水が滞留し、さらに浸水深が3mを超えるような地域における人命確保には、建物の二階等へ避難することによる屋内安全確保ではなく、事前の立退き避難が必要である。とくに要配慮者は、早期に市町村外の安全な福祉施設へ避難させることが望ましい場合がある。市町村境界を超えた避難を可能とするには、当該市町村はもとより、近隣市町村、都道府県、国土交通省、消防、警察等、河川管理者や防災関係機関による連携を前提とした広域避難計画を事前に立案することが不可欠である。また、機関間の情報共有が必要である。そこで、①被災基礎自治体、それを支援する②近隣基礎自治体、そして③県の防災部局、建設部局、県警本部、国土交通省河川管理者、広域消防本部等の支援機関による3つのグループに分類し、筆者の提案するBECAUSEモデルを適用した広域連携体制作りを行った。まず事前の信頼関係づくりにBE-Cのプロセスを実施し、つぎに大規模河川氾濫に対する広域避難を実現する効率的な広域連携体制構築に、A-U-Sの各プロセスを適用した。そして最後に、構築した広域避難体制の有効性検証のための災害図上訓練を、BECAUSEモデルのEのプロセスとして実施した。また、機関内、機関間の情報共有を支援するため、広域連携機能を有する情報共有システムを適用した。災害図上訓練の結果、BECAUSEモデルを用いた研修の主テーマとしていた要配慮者の市町村外への避難、浸水地域への車の流入規制、自動車専用道路への住民避難について広域連携が行われ、また参加者が広域連携に情報共有が不可欠であることを確認した。