今後も多くの人々の居住が予想されるアジアの農村地域では、災害リスクの増大に伴い地方レベルの災害対応能力の向上が重要である。地方行政の限られた資源及び災害経験を補い、効率的な情報伝達体制を整備するためには、災害経験で得られた他地域の知見や経験を生かすとともに、対象地域の住民のニーズを把握することが重要である。
本研究は、はじめに日本とタイそれぞれの地方行政の担当者及び住民へのインタビューに加え、各地域の防災・減災計画の内容を調査した。つぎに、組織間の役割分担を示した業務プロセス図と、観測情報と避難情報それぞれの送受信者の関係をマトリクスで整理した情報連関表を作成し、両地域の災害対応の比較分析を行った。その結果、研究対象地であるタイ地方行政では、中央政府の観測情報・予警報の共有、及び災害対応を指揮する地方行政から住民への避難促進が不十分という課題が明らかになった。本稿では、この課題に対する情報伝達過程の改善策を対象地域の住民のニーズを考慮した上で提案した。