災害情報
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[論文]
地震・津波発生後の自治体タイムラインの研究―兵庫県応急対応行動シナリオ策定のアクションリサーチ―
古林 智宏
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2018 年 16 巻 1 号 p. 1-11

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抄録

米国ハリケーン・サンディ災害では時間軸に沿った防災行動計画(タイムライン)が事前に策定され、被害を最小限に止める工夫が実施された。この成功事例を踏まえ、日本国内でも台風を想定し、水害に対し主に氾濫発生前までの期間を対象にタイムラインが作成されつつある。この手法は、地震・津波による被害の軽減にも有効であるが、まだ一般的ではない。

本稿では、都道府県レベルのタイムラインである兵庫県(2015)の「兵庫県応急対応行動シナリオ」のアクションリサーチを通して、地震発生から津波到達まで及び津波到達後を対象期間とするタイムラインの策定過程及びその効果について報告・検証する。過去の地震・津波災害対応記録を基礎にして構築された同シナリオでは、全体像を俯瞰的に見る視点と、個々のフェーズ毎に各部署の役割を見る視点が組み合わされている。FEMAのESFの取組みを参照した10の業務分野と、津波の到達時刻と災害対策本部会議を基準とした9の時間区分(フェーズ)とで構成され、異なる職員参集率を考慮して昼間発災版と夜間発災版の2種類が存在する。業務分野の設定では、ICSを参照して職員の安全に対する配慮も行われた。策定時の精査では、阪神・淡路大震災経験者が有する経験知の形式知化が行われ、策定後の訓練では、フェーズ毎の達成目標の一覧が積極的な情報取得や情報トリアージに有効であることも確認された。

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© 2018 日本災害情報学会
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