2018 年 16 巻 2 号 p. 153-161
調査参加者が教示文や質問文をしっかり読まず低負荷で回答を進めることはsatisficingとよばれる。本研究の目的は、災害情報の効果測定をオンライン調査によって行う場合のsatisficingの程度とその影響を検討することであった。研究1(N=104)では、火災報知器の義務化についての情報を提示した後、リスク認知や準備行動意図についての質問を行い、最後に、提示された情報を参加者がどれくらい正確に理解しているのかを検証した。結果は、かなりの程度のsatisficingが生じており、それがデータ分析の結果やその解釈に歪みをもたらすことを示唆するものであった。研究2(N=300)では、材料を大地震対策についての情報に変更し、情報提示の直後に理解テストを実施した。しかし、直後のテストでさえ再認の成績は全体的に低く、多くの参加者は情報そのものの正確な記憶のみならず、概要さえも十分に把握していないことが確認された。最後に、災害情報の効果測定におけるデータ収集環境の外的妥当性という観点からsatisficingの問題を議論した。