2020 年 18 巻 2 号 p. 235-245
本研究は、1995年の阪神・淡路大震災以降に展開されている多文化社会の防災政策について、近年の調査や研究から、平時・災害時にかかわらず、多言語情報提供が主要な施策として位置付けられていることを述べた。また、災害時の多言語情報提供に向けた取り組みが各公的機関で進められているが、実効性のある施策を講じることが難しい実態を指摘した。
さらに、外国人住民を対象としたアンケート調査から、外国人の災害時の避難行動には、外国人の多様なネットワークが強い影響を及ぼしていることを示した。そのうえで、災害時の多言語情報提供には被災者の安心に役立つ効果はあるものの、情報の速報性、個別性、流通性の3つの観点から限界が生じることを明らかにした。これらは将来の技術革新などによって解消される可能性があるが、現時点では「公助の限界」として認識すべき点である。