2019年の出水期には、3月に改定された「避難勧告等に関するガイドライン」にもとづき市町村から避難情報が発令され、7月から市町村における避難勧告等の発令の支援情報となる大雨危険度通知の配信も気象庁より始まった。本研究では、こうしたなか10月に襲来した台風第19号を事例として、全国の市町村の避難勧告等の発令状況の分析を行なった。避難勧告等のデータとして、豪雨の際に情報共有基盤システム上で送信された実データを用いる手法を採用した。避難情報等の迅速で多様な伝達のための情報共有基盤システムであるLアラートが全47都道府県と接続し、2019年4月から全国市町村の発信する避難情報が集約され放送局等へ提供されるようになったことから、初めて本手法が可能となった。本研究は当該データを用いた分析を行い、その有用性や改善すべき点を明らかにすることを目的とした。
台風第19号の事例分析の結果、災害対応中に集約されている避難勧告等の報告数よりも多くのデータ数を取得でき、各種の避難情報の発信の時間推移や空間分布、また各市町村における大雨危険度の上昇と避難情報の配信との時間関係を定量的に明らかにできることを示した。将来の豪雨災害時にも、同様のデータ分析を行い結果の蓄積を重ねることにより、今後に新しい避難に関する施策が導入された際、その効果を前後のデータから比較し定量的に評価できるようになる可能性がある。
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