広域災害時に被災地外から被災地に救援者が向かう場合、円滑に通行できる地域、通行に支障をきたしている地域が事前に把握できれば、早い段階で通行障害がある地域を避けた迂回ルートを選択することができ、より迅速な救援救助活動につながると期待される。これに対して道路の交通状況を把握するシステムとして、路上に設置したセンサを用いるVICSや、自動車に設置したGPSを用いるプローブカーシステムがすでに実用化されている。しかし中山間地など人口が少なく、平常時に渋滞があまり発生していない地域では、センサの設置や、プローブカーの走行が十分ではなく、交通状況は十分に取得されているとはいえない。海外では携帯電話の基地局情報を集計することで交通状況を把握するシステムがすでに実用化されている。日本にも同様のシステムを導入すれば、携帯電話が通じるすべての地域において、道路だけでなく、列車の運行も含めた交通状況を把握できると期待される。本稿では、これら海外での事例を踏まえ、日本での実施可能性を検討するとともに、観測実験によりデータ精度の検証を行った。