平成16年の一連の豪雨災害における避難情報等の伝達等に係る課題をふまえ、内閣府では「避難勧告等の判断・伝達マニュアル作成ガイドライン」を作成・公表した。ガイドラインでは、急激に進展する中小河川での洪水災害時において災害時要援護者でも対応できるよう、避難勧告の前の段階で避難準備情報を発令することとし、従来の避難勧告、避難指示を含めた三類型とした避難情報の発令とその基準のあり方について提示している。
本研究では、避難準備情報の導入に伴い避難情報を段階的に発令することによる効果と問題点を、住民の意識、対応行動の観点から考察するとともに、避難情報に対する住民の受容構造を明らかにすることで,現状の避難情報提供に係る課題を抽出した。分析の結果、避難情報が段階的に発令されることによって、住民の家財保全行動や避難準備行動は促進され、事前に情報を得ている住民ほど次に発令される情報を取得しやすいという効果がみられた。しかし、避難情報に段階性があるために、多くの住民が、避難は避難勧告ではなく最終的に発令される避難指示で行う意向をもつ傾向にあること、また、避難準備情報については、その発令に関して住民は肯定的に捉えているものの、早い段階で発令されるが故に情報を軽視する傾向にあることなどが明らかとなった。これらの結果を受けて、避難情報が活かされるためには、情報の受け手である住民の災害情報リテラシーの向上が必要不可欠であることを指摘した。