災害情報
Online ISSN : 2433-7382
Print ISSN : 1348-3609
[論文]
災害対応時の情報マネージメントに着目した情報システムの効果の検証
近藤 伸也目黒 公郎
著者情報
ジャーナル フリー

2008 年 6 巻 p. 79-88

詳細
抄録

本研究は、災害対応時における情報システムの効果を、情報マネージメントの視点から検証し、課題の抽出とその解決策の検討を目的とするものである。

はじめに地方自治体の災害対応時における情報システムの導入効果の検証を目的として実施した実証実験を対象に、自治体職員の動きを克明に記録し、分析できるシステムを構築した。これにより、実験参加者の発言内容、意思決定に用いたシステム画面、実際の動きを総合的に比較・分析して、情報収集から対応業務の指示までの一連の動きを構造化した災害対応業務処理フローを作成する環境を整備した。

この環境を踏まえて、まず単一部局の視点から情報システムの効果を検証した。検証の結果、次のような点が明らかになった。情報マネージメントの視点から災害対応業務を改善するためには、従来の情報収集・集約業務を情報システムに置き換えるだけでは不十分である。これはシステムの効果が十分に発揮されないだけではなく、現場担当者から不満が出る原因となる。システムそのものの改善も重要であるが、現行の体制や業務処理フローなど業務に関連する項目などを総合的に分析し、それぞれの視点から改善案を検討することで、はじめて情報システムの特性を生かした災害対応業務の改善がはかられる。次に単独の自治体だけではなく、同様の情報システムを各自治体が導入することによって、より効果的で効率的な情報マネージメントが実現できることも示した。

著者関連情報
© 2008 日本災害情報学会
前の記事 次の記事
feedback
Top