抄録
目的:本研究では、特に事故発生率が高い中学校におけるスポーツ事故に着目し、中学校の体育授業中における短距離走での骨折事故を対象に、文部科学省が2014年度から実施したスポーツ事故防止対策推進事業及び2015年6月に発出した事故防止のための通知が行われた前後の年度による事故発生状況の差異と年度による変化を明らかにすることを目的とした。
方法:独立行政法人日本スポーツ振興センターが収集している災害共済給付データから、中学校の体育授業中の短距離走により骨折又は挫傷・打撲した災害(2013年度1,510件、2015年度1,478件)を抽出し、各年度の負傷部位や骨折の発生要因を比較するとともに、決定木分析を用いて、骨折に関係のある項目の相互関係と年度による差異を検証した。
結果:主な結果として、骨折及び挫傷・打撲の件数を負傷部位により比較したところ、年度による件数及び傾向はほとんど変化がなかった。また決定木分析の結果、骨折に最も関連の強い項目はどちらの年度も負傷部位でほぼ同じ3つのカテゴリに分岐し、さらに「大腿部・股関節」を含むカテゴリは性別によって分岐し、男子の方が女子と比較して骨折の割合が顕著に高いという特徴に変化はなかった。骨折の割合が最も高いパターンについても、年度による大きな違いは見られなかった。
結論:2013年度と2015年度で中学校の体育授業中の短距離走により骨折事故の発生状況を比較したところ、負傷部位別の発生件数の傾向及び骨折の発生件数・発生状況はほぼ同様の傾向を示しており、災害の発生状況に大きな変化がないことが示唆された。今後は、国によるスポーツ事故防止対策の効果をより詳細に検討するとともに、決定木分析等を活用し、災害共済給付データから得られた知見を効果的な事故予防策の立案につなげていくことが期待される。