抄録
東京大学大学院教育学研究科附属海洋教育センターでは、本学の様々な分野の海洋学の研究者と協同して海洋教育を推進するために、「海洋教育基盤研究プロジェクト」を実施している1)。その中の研究課題「研究成果の社会還元~出張授業ならびに防災教育の教材制作~」において、我々は海洋教育の基本理念「安全」に焦点を当て、教育機関等への「防災・減災」に関する防災教育を実施している。ここでは、自然災害に関する研究成果の社会還元を図ることを目的として、地域の地理・地形・災害史に特化した教材を制作して出張授業を実施するとともに、教職員への防災教育を実施している。本稿ではその実践例として、令和2年11月に福岡県の公立高等学校で行った教職員を対象とした防災研修について報告する。研修では、令和2年7月豪雨の浸水原因、各災害想定(ハザードマップ)の科学的根拠、学校での自然災害に対する危機管理の課題、防災マニュアル作成のポイント等について解説した。防災研修後にはアンケート調査を実施し、本取組みの事後評価と課題の整理を行った。アンケート調査からは、地域で過去に発生した災害や地形・地理学的条件を整理した教材を制作し、防災研修に活用することで受講者の高い興味・関心を惹きつけることができることが示された。一方で、アンケート調査からは、防災研修がその後の避難訓練に十分に活用されなかった可能性が示され、その後の具体的な行動にどのように繋げていくかについては課題が残る。これらの取組みは、地域の防災力ならびに教職員の災害時対応力の向上に資するものと期待される。