抄録
もし、生徒がネガティブ感情を上手く調節することなく道路交通に参加するならば、情動は、リスクテイキング行動や不注意行動を誘発する内的リスク要因となりうる。情動やストレスへの対処能力を高め、個人の資源を豊かにするライフスキル教育は、成長過程にある生徒の教育ニーズに合致する。本研究では、青少年の対処法の力を育む教育プログラムを開発し、その教育効果を検討することを目的とする。87名の高校生(15〜18歳)が教育プログラムに参加した。プログラムは、認知的または行動的な対処法を様々に学習するものである。たとえば、遅刻しそうで焦る、体調不良のときにやるべきことをたくさん抱える、友人との関係が気まずくなるなど、ストレス状況にあるときに、どのようにすれば感情をうまく調節できるかが話し合われる。教育参加後の事後テストで、生徒のストレス感が低下し、自己効力感が高まることが示された。この効果に関して、学年間(高校1年生と3年生)による違いは見出されなかった。しかし、もともと自己効力感の低い生徒は、自己効力感の高い生徒と比較して、ストレス感の低下をさほど大きく知覚していないことも分かった。分析結果は、学校現場での安全教育とライフスキル教育の普及という観点から、教育プログラムの改善に役立てるものとする。