抄録
近年、シミュレーション教育の重要性が高まる一方で、24 時間 365 日利用可能なシミュレーションセンターが学生の技能教育に与える影響については、十分に検討されていない。本研究では、2022 年度に本学医学部医学科 4 年生であった学生が、4~ 5 年次の 2 年間に記録した 799 件の利用データを後方視的に分析し、さらに利用経験や利用目的に関するアンケート調査を実施した。利用記録の解析の結果、客観的臨床能力試験(objective structured clinical examination: OSCE)直前の 2 か月間に利用者数が増加し、OSCE との関連が強い機材の使用が顕著であった。その後、利用者数は一時的に減少したものの、臨床実習開始後に再び増加傾向となった。アンケート調査では、臨床実習中の学習や評価の機会に応じて腹腔鏡シミュレーターなどが活用されていることが明らかとなった。さらに学生の自由記載の分析から、「24 時間開放」に対する高評価が得られる一方で、「利用方法の提示」などの改善を求める意見も寄せられた。以上より、シミュレーションセンターの利用者数と利用機材の選択は、カリキュラムの影響を強く受けていることが示された。また、管理者不在の環境下においても、学生が自主的に技能学習を進めている実態が明らかとなった。今後、学生のシミュレーション学習をさらに推進するためには、外発的動機づけを促す評価機会の提供や、内発的動機づけを高める仕組みの導入が重要であると考えられる。