シミュレーション教育における導入初期段階の学習効果を明らかにするため、4 段階で構成されたシミュレーション科目の初段階(Step1)と次段階(Step2)における学習者の学習意欲および学習課題を検討した。旧・新カリキュラムの学生 207 名を対象に、ARCS-V モデルに基づく自己評価と Step1 履修後の課題レポートを用いて量的・質的分析を行った。量的分析では、ARCS-V の 5 要因のうち有意差を認めた項目では「やりがい」を除き Step1 が高値を示し、初段階では学習者が課題に取り組みやすい状態にあったことが示された。一方、Step2 では課題難易度の上昇により挑戦度は高まったが、学習者の準備性との不均衡からフロー状態に至りにくい傾向がみられ、Step1 から Step2 への移行において難易度と準備性の均衡が動機づけに影響することが示された。質的分析では、『症状・疾患の理解』『発達段階に応じた観察』『コミュニケーション』『臨機応変な対応』『家族への情報収集』の 5 つの学習課題が抽出され、テクニカルスキル中心の初段階であってもノンテクニカルな側面への気づきが得られていた。以上より、段階的シミュレーション教育では、学習者の準備性に応じた課題難易度の調整、事前課題の工夫、既習内容に基づくシナリオ設計が重要であり、スパイラル・カリキュラムの概念応用の有用性が示唆された。
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