日本シミュレーション医療教育学会雑誌
Online ISSN : 2436-4452
Print ISSN : 2187-9281
最新号
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原著
  • 医療シミュレーションにおける協働的活動の動線分析と会話分析を用いて
    黒嶋 智美, 依田 育士, 川島 理恵, 内田 康太郎, 本間 宙
    2026 年14 巻 論文ID: 2026-14-05
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/09/17
    ジャーナル 認証あり
    医学シミュレーション教育において,信頼性が高く妥当な評価方法あるいは評価基準の検証は十分行われているとは言い難い.そこで,心肺蘇生のシナリオで 29 件の In-situ シミュレーションを実施し,チーム医療の評価基準とその評価法について以下の方法で検討をした.まず,専門家による心証評価と参加者のシミュレーション中の動線データに基づく動線評価を行い,両評価が一致する事例および不一致となる事例を抽出した.次に,抽出された事例を対象として,相互行為の実践の仕組みを明らかにする会話分析を用いてシミュレーション中のやりとりを分析し,評価の一致・不一致を生み出す要因について検討した.その結果,心証評価と動線評価の順位の間には一定の正の相関が認められた.一方で,会話分析の結果から,両評価が不一致となる背景には,評価手法間における評価基準の差異が関与していることが明らかになった.以上の結果から,シミュレーションにおける心証評価は,動線評価や実際の相互行為を検討する手法と組み合わせ,相補的に実施することの妥当性が示唆された.
研究報告
  • 3つの市中病院における取り組み
    中垣 達, 青木 太郎
    2026 年14 巻 論文ID: 2026-14-03
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/05/08
    ジャーナル 認証あり
    背景:看護師は心肺停止患者に対して一次救命処置(Basic Life Support:以下 BLS)を実施する能力を備えておく必要がある。一方で BLS の構成要素(胸骨圧迫、人工呼吸など)に対する自信とそれらを実施する能力の関係性については十分には明らかにされていない。 方法:3 つの市中病院の看護師に対してアメリカ心臓協会の心肺蘇生と救急心血管治療のためのガイドライン 2015 に準拠した BLSプロバイダーコースを実施した。コース開始前にアンケート、実技試験、筆記試験を実施した。BLS の構成要素に基づくアンケートの項目ごとに自信の有無によって実技試験、筆記試験の成績を比較した。 結果:原則としてアンケートの各項目における自信の有無によって実技試験の各項目の正誤に有意差はなかったが、人工呼吸における自信の有無によって初回の人工呼吸の正誤に有意差がみられた。 考察:BLS の構成要素に対する自信と BLS を適切に実施する能力には乖離がある傾向が見受けられたが、初回の人工呼吸は自信と能力が一致する傾向があることが示唆された。一方で、サンプルサイズが小さくさらなる研究が必要である。
  • 初期段階の学習意欲と学習課題の認識
    下山 博子, 荒木 恵子, 志田 佑佳子, 井村 紀代子, 佐藤 郁美, 佐々木 沙織, 久嶋 美和, 太田 真美, 桶谷 涼子
    2026 年14 巻 論文ID: 2026-14-06
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/09/17
    ジャーナル 認証あり
    シミュレーション教育における導入初期段階の学習効果を明らかにするため、4 段階で構成されたシミュレーション科目の初段階(Step1)と次段階(Step2)における学習者の学習意欲および学習課題を検討した。旧・新カリキュラムの学生 207 名を対象に、ARCS-V モデルに基づく自己評価と Step1 履修後の課題レポートを用いて量的・質的分析を行った。量的分析では、ARCS-V の 5 要因のうち有意差を認めた項目では「やりがい」を除き Step1 が高値を示し、初段階では学習者が課題に取り組みやすい状態にあったことが示された。一方、Step2 では課題難易度の上昇により挑戦度は高まったが、学習者の準備性との不均衡からフロー状態に至りにくい傾向がみられ、Step1 から Step2 への移行において難易度と準備性の均衡が動機づけに影響することが示された。質的分析では、『症状・疾患の理解』『発達段階に応じた観察』『コミュニケーション』『臨機応変な対応』『家族への情報収集』の 5 つの学習課題が抽出され、テクニカルスキル中心の初段階であってもノンテクニカルな側面への気づきが得られていた。以上より、段階的シミュレーション教育では、学習者の準備性に応じた課題難易度の調整、事前課題の工夫、既習内容に基づくシナリオ設計が重要であり、スパイラル・カリキュラムの概念応用の有用性が示唆された。
実践報告
  • ~実践共同体シミュレーションスペシャリストセミナー開催を通じて~
    小松 真也, 佐藤 直, 塚本 伶央奈, 内藤 知佐子, 熊木 天児
    2026 年14 巻 論文ID: 2026-14-01
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/02/09
    ジャーナル 認証あり
    シミュレーション医療教育は,安全かつ質の高い医療を提供するために,医療従事者の教育において必要不可欠である.近年,多くの大学や医療機関にシミュレーションセンターが設置されている.これらのセンターを円滑かつ効果的に運営するためには,シミュレーションスペシャリスト(以下 SS)など,シミュレーション医療教育に精通したスタッフの存在が非常に重要である.本邦においても SS の重要性は徐々に認識されつつあるが,その役割や定義については依然として明確な基準が存在しない.このような状況の中,2013 年に実践共同体「シミュレーションスペシャリストの会」が設立された. 本報告では,第 9 回 SS セミナーにおいて実施したアンケート調査をもとに,セミナーの評価および現状の課題を明らかにすることを目的とした.参加者の多くはセミナー時間を適切と感じ,プログラム内容も期待に沿う内容であったと回答した.結果として,参加について肯定的な意見が多く見られた.一方,今後取り上げてほしい内容として,情報共有の手段に課題を有することが明らかとなった.今後,ホームページ等の情報発信をさらに充実させ,SS の活動を継続して広めていくことで各施設のシミュレーションセンターの効果的かつ円滑に運営がされることが期待される.
教材・シナリオ
  • 石井 和美, 北濱 まさみ, 河合 宏之, 小林 宏光
    2026 年14 巻 論文ID: 2026-14-02
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/02/09
    ジャーナル 認証あり
    モロー反射とは、大きな音や明るい光・身体が傾いたときなどに新生児が手足をビクッとさせ、両手を外側に広げ、その後抱きつくような反射である。看護学生が実習中に乳幼児を扱う際にも児がモロー反射を起こす可能性がある。看護学生のほとんどは実習で実際の新生児に触れるまではモロー反射を体験することが少ないため、初めてのモロー反射の体験に驚き、事故等につながる恐れもある。新生児のシミュレータはすでに存在し、看護教育でも活用されているが、モロー反射を含めた原始反射を起こす機能を持ったシミュレータは現状では存在しない。今回、著者らはモロー反射と同様の動作をする新生児のシミュレータを開発したので、これについて紹介する。
関連学会報告
  • 大場 健司, 万代 康弘, 五十嵐 寛
    2026 年14 巻 論文ID: 2026-14-04
    発行日: 2026年
    公開日: 2026/05/13
    ジャーナル フリー
    2024 年、2025 年、2026 年に開催された国際医療シミュレーション学会 The International Meeting on Simulation in Healthcare(IMSH)について報告する。医療分野の多くの国際学会は、新型コロナウイルス感染症の流行を契機にオンライン開催へと移行し、その後も円安や物価高などの影響により、本邦からの参加者数が減少していることが指摘されている。IMSH に関しても、国内からの参加状況や学会動向に関する報告は、2020 年の金子による報告以降、十分に共有されていない。このような背景のもと、著者らは IMSH に継続して参加する機会を得たため、近年の IMSH の開催状況や学会の特徴について情報共有を目的として本報告を行う。あわせて、IMSH 開催に併せて実施した南フロリダ大学への訪問、Society for Simulation in Healthcare(SSH)と本学会との調印式、ならびに SSH と日本医療教授システム学会(Japan Society for Instruction Systems in Healthcare:JSISH)との調印式についても紹介する。さらに、著者らの研究発表を例に、演題登録からポスター発表に至るまでの流れを概説し、今後 IMSH での発表を検討する研究者の参考となる情報を提供したい。
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