抄録
本論文では,知的障がい児が生活する入所型施設における個室のしつらえの様態から児童の生活支援の実態を報告することを目的として,個室型および多床室型施設において,実測調査及びヒアリング調査を実施した。その結果,個室型施設では自立訓練や自己実現など彼らの主体性を促す実践がなされているなど,特性に応じたしつらによる支援が施されていること,また,重度障がい児の個室では必要最少限の家具のみが置かれている傾向があるのに対し,中軽度障がい児の個室では児童の個性を表出したしつらえのなされる傾向があり,児童1人ひとりの特性に応じた空間づくりがなされていることが明らかとなった。このことから,個室は児童の特性に応じたしつらえがし易く,彼らに規則正しい生活習慣を身につけさせる空間として有効であることがわかった。