1989 年 45 巻 11 号 p. 827-836
本研究の目的は不特定話者の日本語全子音を高精度に識別することである。我々の提案している2群対判別法は、各子音の対立的特徴を十分に抽出するために線形判別分析を音素の対ごとに行い、それらの結果を組み合わせて全体としての識別結果を求める2段構成になっている。認識カテゴリは後続母音の影響を考慮して音韻論上の子音の分類より細かい26群とした。用いる対の数は識別率が収束した120個とした。これは可能な対の数全体26_C_2の約1/3にあたる。慣用の判別分析(多群同時判別法)による平均識別率は81.0%であったが、2群対判別法による平均識別率は91.5%となった。また、対判別結果の統計量として事後確率が、それを組み合わせる手法としてminimax法が、それぞれ最も有効であった。