日本音響学会誌
Online ISSN : 2432-2040
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相互相関を用いた大動脈壁のトラッキングとその微小振動速度の推定
広瀬 功一金井 浩中鉢 憲賢
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1992 年 48 巻 12 号 p. 863-870

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抄録

超音波ドプラ計測法を大動脈壁の微小振動速度の計測に適用すると、超音波パルスは大動脈壁の表面と裏面で反射するので、反射波はダブルピークの形状となる。従って精密な振動計測のためには、このダブルピークを固定して、表面と裏面からの反射波を分離する必要がある。しかし、従来のような反射波の最大振幅のタイミングの探索を行って大動脈壁での反射波をトラッキングする方法では、壁の平均的な振動速度しか得ることができない。そこで本論文では、心電図を参照しながら切り出した各被験者の代表的なダブルピーク波形をモデル波形に選択し、そのモデル波形と各反射波との相互相関をとることで、大動脈壁の表面と裏面に対応した二つのピークそれぞれのトラッキングを行う手法を提案する。更にトラッキングされた点における位相を用いて、大動脈壁の両面における微小振動速度を分離して推定する。このような精密な計測を行うことによって、大動脈弁の解放・閉鎖に伴う微小振動を得ることが可能となった。更に正常者と動脈硬化症の患者のこれらの微小振動をスペクトル分析した結果を示す。

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© 1992 一般社団法人 日本音響学会
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