特定の音に注意を向けていると、他の音は抑制されて感度が下がる。この現象が、聴覚系のどこで、どのように起こっているかは不明だが、聴覚系内に何等かのフイルタが存在すると考えられる。本研究では、2IFC法により、精神測定関数を求め、その右のシフト量から probe 音に対するパフォーマンスの低下を算出している。その結果、cue 音と、prove 音の周波数差が 20Hz 以下のときには、パフォーマンスに変化はないが、50Hz のときにはすでにパフォーマンスの低下が観察される。このことから、注意バンドは臨界帯域よりむしろ臨界比に対応すると考えられる。両者の周波数差が、100Hz以上になると、シフト量は3〜4 dB 一定となる。これが注意による抑制効果と考えられる。また、精神測定関数の傾斜は通常の実験条件では、5〜6%/dB となり、この値は、Scharf や Buus らのデータとも一致する。一方、probe 音に対しては傾斜が急となり7〜8%/dB となった。